シン・エヴァンゲリオン劇場版で完結を迎えた新世紀エヴァンゲリオン。
難解な用語や謎を残すシーンの数々は、多くの考察の余地をファンに与え、その解釈を巡って議論を交わすこともエヴァの楽しみの一つとなっていmくぅ。
そんなエヴァの中では、キリスト教や神話をモチーフにしていると思われる用語や概念が数多く登場しており、この背景知識があることでよりエヴァの世界を深く理解できるようになっています。
本記事では、エヴァに登場するキリスト教や神話に関連する用語をまとめて紹介・解説していきます。
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エヴァで扱われている神話やキリスト教の用語
アダム
アダムは、エヴァンゲリオンの世界において、白き月に乗って地球に飛来し「生命の実」によって永遠の命を宿す使徒を生み出しました。アダムが生み出したのは、第3使徒～第17使徒。
旧TVシリーズでは、アダムは一体の光の巨人として登場しましたが、新劇場版では２本槍を持った４体の天使のような姿で登場し「アダムス」という複数形で呼ばれていました。
フィフスチルドレンとして登場した渚カヲルは、人間の肉体にアダムの魂を入れて作られた存在でした。
このアダムは、「アダムとイヴ」として有名な、創造主ヤハウェ・エロヒムによって創られた最初の人間「アダム」に由来しています。
キリスト教旧約聖書におけるアダムは、創造主ヤハウェに背いて、エデンの園の「善悪の知識の木の実」を食べてしまい、ヤハウェはアダムとイヴが「生命の樹の実」を食べ自分達と同じになることを恐れ、エデンの園を追放されることになりました。
この「善悪の知識の木の実」と「生命の樹の実」もモチーフとしてエヴァに利用されている。
リリス
エヴァンゲリオンの世界において、「白き月」に乗って地球に飛来したアダムの後に、リリスの卵である「黒き月」が地球の箱根（後の第三新東京市）に落下しました。
この時の衝撃でファーストインパクトが発生し、先に地球に降り立ったアダムや使徒たちは眠りについてしまいます。
その後地球に飛来したリリスは、知恵の実を与えた人類(第１８使徒リリン)を地上に生み出しました。
本来、アダムとリリスは、別々の星に飛来する予定だったのが、手違いによって２体とも地球に飛来し、アダムによって生み出された使徒と、リリスによって生み出された人類の二つが同時に存在するようになってしまいました。
どちらか一方しから地球に存在してはならない定めになっており、これによって使徒と人類は互いの存亡をかけて闘う運命となりました。これがエヴァのストーリーの軸になっています。
ユダヤ教の宗教文書タルムードおよびミドラーシュにおいて、リリスは夜の妖怪とされ、また、しばしば「最初の女性」「アダムの最初の妻」とされ、アダムとリリスの交わりから悪霊たちが生まれたと言われています。
そして、このアダムとリリスの交わりから生まれた、リリスの子どもたちはヘブライ語でリリンとも呼ばれているそうです。
エヴァにおいて、黒き月に乗ったリリスが人類(リリン)を生み出したという設定はここから来ていると考えられます。
最初の女性といえば「イヴ」を想像する人も多いと思いますが、旧約聖書においては、イヴが最初の女性であり、最初のアダムの妻として描かれています。
リリスがアダムの妻として描かれたのは、6世紀に、東方からヨーロッパに伝わったイスラエルの書物『ベン・シラのアルファベット』においてで、イヴではなくリリスがアダムと同時に同じ塵から作られ、アダムの最初の妻になったと描かれました。
リリスは、アダムとの平等を要求し、アダムが彼女を自分の下にしようとすると、リリスはエデンから逃亡。さらに悪魔と性交して妊娠し、1日に100人以上の子を産むというなかなかに破天荒な行動にでます。
神は、リリスのもとに３人の天使を遣わして、アダムのもとに帰るように説得しましたが、リリスは拒否。その後、神はアダムの肋骨からイヴを生み出して、アダムの後妻としたとされています。
リリスはアダムに従うような大人しい女性ではなく、アダムに逆らうその姿は、まさにエヴァにおける白き月と黒き月の対立と似ていますね・・・
生命の実
エヴァにおける生命の実は、アダムによって生み出された使徒が与えられており、永遠の命を宿す力があります。
生命の実とは、別名「S²機関」とも呼ばれる永久機関で、エネルギーが無尽蔵に供給されるため、使徒は永遠の命をもち、半永久的に活動ができるようになっています。
旧約聖書の創世記（2章9節以降）にエデンの園の中央に植えられた木を「生命の樹」と呼び、この生命の樹の実を食べると、神に等しき永遠の命を得ることができるとされています。
創造主ヤハウェ・エロヒムが、「知恵の樹の実」を食べたアダムとイヴを追放したのは、さらに「生命の樹の実」を食べてアダムとイブが神に等しい存在になることを恐れたためです。
知恵の実
エヴァにおける知恵の実は、リリスによって生み出された人類が与えられており、その知恵を活かした人類は地球の支配者となりました。
旧約聖書の『創世記』（2章9節以降）に登場する木を「知恵の樹」もしくは、「善悪の知識の木」とも呼ばれ、この樹の実を食べると、神々と等しき善悪の知識を得るとされています。
ヤハウェ・エロヒムによって、「知恵の樹の実」を食べることを禁じられたアダムとイヴでしたが、人間を神に背かせようとする蛇にイヴが唆され、そのイヴがアダムに勧めて「知恵の樹の実」を食べてしまいました。
ここで、知恵や知識を得たアダムとイヴは、裸であることを恥ずかしいと感じるように、イチジクの葉で陰部を隠すようになりました。
このいわゆる禁断の果実を食べたことで、アダムとイヴはエデンの園から追放されることとなりました。
使徒
エヴァにおける使徒は、第３〜17使徒を生み出したアダムを第1使徒として、黒き月に乗って地球に飛来して人類(第１８使徒リリン)を生み出したリリスを第２使徒としています。
つまり、地球にいる人類、使徒、その生みの親であるアダムもリリスも、総称して使徒になっています。
キリスト教用語としての使徒は、イエス・キリストの12人の高弟を指します。原語であるギリシャ語では、「派遣された者」が原義であり、転じて「使者」「使節」とも言われています。
第1使徒アダムの魂をもつ、第１７使徒タブリスでもある渚カヲルが初登場した、アニメシリーズの２４話のタイトルは「最後のシ者 (さいごのししゃ)」でしたが、「使徒=使者」であり、また渚カヲル自身ゼーレから「派遣された者」でもあるなど、原語であるギリシャ語に由来する意味がいろいろとかかったタイトルになっていました。
裏死海文書
エヴァの世界における裏死海文書とは、アダムが乗った白き月とともに地球にやってきたとされています。
この裏死海文書を発見したゼーレは、人類が使徒と闘う運命を悟り、人類補完計画などを画策していったとされています。
人類を超える高度な知能をもった存在によって作り出された、未来を示す諸物が裏死海文書なのです。
現実の世界において、死海文書は、1947年以降死海の北西（ヨルダン川西岸地区）にあるクムラン洞窟などで発見された972の写本群の総称。ヘブライ語聖書の最古の写本を含んでいて、宗教的にも歴史的にも大きな意味を書物です。
エヴァの世界のように未来を示すようなものではなく、第二神殿時代後期のユダヤ教の実情をうかがわせるようなものになっています。
ロンギヌスの槍
ロンギヌスの槍は、「絶望」を司る槍で、A.T.フィールドを無力化する能力（アンチA.T.フィールド）を持つ。
ゼーレらが、南極において使途が目覚める前にアダムを卵にまで還元するために、ロンギヌスを使用。その際の衝撃によってセカンドインパクトが発生し、人類の生命体の半数以上が死滅する大惨事が起こりました。
その後、ゲンドウたちがロンギヌスの槍を回収し、セントラルドグマのリリスに突き刺されるかたちで保管されていました。
その後、宇宙空間から精神攻撃をしかける第15使徒アラエルを倒すために、綾波レイが操縦するエヴァ0号気がロンギヌスの槍を投擲したことで、衛星軌道上に乗ってしまい回収不能になりましたが、旧劇場版において、初号機を依代に人類補完計画が始まる際に、宇宙空間から呼び戻されていました。
新劇場版：Qにおいては、シンジが操縦するエヴァ第13号機が、リリスの骸に突き刺さっていた２本のロンギヌスの槍を引き抜いたことで、フォースインパクトが発動していました。
ロンギヌスの槍は、誰が何のために生み出したのかは不明ですが、アンチA.T.フィールドによる攻撃能力と、インパクトを引き起こしたり、インパクトを抑制する効果を持つと推察されます。
ロンギヌスという名前の由来は、磔刑に処せられた十字架上のイエス・キリストの死を確認するため、わき腹を刺したとされる槍である「聖槍・ロンギヌス」から来ていると考えられます。
聖槍な、イエスの血に触れたものとして尊重されている聖遺物とされます。ロンギヌスという名前は、イエスの体に槍を突き刺した兵士の名前から来ています。
カシウスの槍
カシウスの槍は、「希望」を司る、ロンギヌスと対極に位置する槍です。
新劇場版から登場したアイテムで、新劇場版：破で擬似シン化第二形態となった初号機に、渚カヲルの操縦するエヴァMark.6が投擲して突き刺して、サードインパクを止めていました。
また、シン・エヴァンゲリオン劇場版では、ゲンドウが操るエヴァ13号機がロンギヌスの槍をもち、シンジが操縦する初号機はカシウスの槍をもって相対するなど、まさにロンギヌスと並び立つ槍です。
ロンギヌスの槍とカシウスの槍の２本の槍があれば世界をやり直すだけの力を発揮するとされています。新劇場版：Qでは、シンジをカヲルが、サードインパクトによって半壊した世界を、ロンギヌスとカシウスの槍の２本を使ってやり直そうとしていました。
カシウスの名前の由来は、ガイウス・ユリウス・カエサルを暗殺した首謀者の1人で、共和政ローマ末期の軍人・政治家「ガイウス・カッシウス・ロンギヌス」から来ていると考えられます。
ガイウス・ユリウス・カエサルは、古代ローマで最大の野心家で、永久独裁官でした。カエサルは、全人類を巻き込んで、人類補完計画を推進しようとする碇ゲンドウのような人間であり、そんなカエサルを止めたのがカシウスであり、ゲンドウの目論見を阻止しようとしたシンジが手にした槍がカシウスというのも繋がりが感じられます。
ガイウスの槍
ガイウスの槍は、シン・エヴァンゲリオン劇場版で初めて登場した第三の槍です。AAAヴンダーの内部パーツを使用して、ヴィレのメンバーが作り出しました。
ロンギヌスとカシウスが、人ならざるものが生み出し、既に地球上に存在していましたが、ガイウスの槍は、人類の知恵と意思が生み出した槍です。
この槍を、葛城ミサトが命がけでゲンドウと対峙するシンジのもとに送り届け、ゲンドウの目論見の阻止に成功しました。
ガイウスの名前の由来も、カエサルを暗殺した首謀者の一人、「ガイウス・カッシウス・ロンギヌス」から来ていると考えられます。
ガフの部屋と扉
エヴァにおける、ガフの部屋は、TVシリーズの第弐拾参話においてリツコが放った「ガフの部屋は空っぽだった」というセリフで初登場。白き月と黒き月のそれぞれに存在する「全ての生命の魂の帰る部屋」とされています。白き月は使徒の魂が還る場所で、黒き月は人間の魂が還る場所です。
ガフの部屋には、ガフの扉があり、新劇場版：破で初号機がトリガーとなった際に、初号機の頭上の天使の輪が広がるようにして出現していました。
ガフの部屋の由来は、ヘブライ人の伝説にある、神の館にある魂の住む部屋と考えられます。
この伝説によると、すべての子供達はこのガフ部屋で魂を授かるとされており、またスズメはこのガフ部屋から降りてくる魂を見ることができるそうです。
そのため、スズメのさえずりは子供が誕生する前兆である一方、ガフの部屋の魂が空になれば魂のない子供たちが生まれて、スズメはさえずるのを止めるため、すずめのさえずりが止まるのは世界の破滅の前兆とされていたそうです。
ゼーレのマーク
秘密組織ゼーレのモノリスには、りんごと蛇、そして７つの目に、ZEELEの文字とその下には「berm Sternenzelt richtet Gott, wie wir gerichtet.」という文字が刻まれています。
りんごと蛇は、エデンの園の禁断の果実(知恵の実)と、その禁断の果実を食べるようにイヴを唆した蛇を表しています。
７つの目は、地上の王国の滅亡と神の国の到来を示す『ヨハネの黙示録』に記された、7つの目を黙示録の仔羊（もくしろくのこひつじ）に由来していると考えられます。
7つの目の子羊は、『ヨハネの黙示録』の中で、神の力、富、知恵、威力、誉れ、栄光、賛美など神秘的な霊能を与えられる者として描かれています。
「berm Sternenzelt richtet Gott, wie wir gerichtet.」は、ドイツの詩人・フリードリヒ・フォン・シラーの詩『歓喜に寄せて』からの引用されたもので「星空の上で神が裁く、我等がどう裁いたか」という意味。
マルドゥック機関
エヴァにおける、マルドゥック機関とは、人類補完委員会直属の諮問機関で、エヴァンゲリオンのパイロットとなるチルドレンの選出を行っています。
マルドゥックの由来は、古代バビロニアの主神で50の異名を持つマルドゥクです。
ネブカドネザルの鍵
ネブカドネザルの鍵は、新劇場版で登場した新しいキーアイテム。新劇場版：破において、加持リョウジが、『予備として保管されていたロストナンバー。神と魂を紡ぐ、道しるべですね。』と語りゲンドウに渡していました。
この時は、まだネブカドネザルの鍵が、何のために用意されたものかは不明でしたが、シン・エヴァンゲリオン劇場版において明らかになりました。それは、ゲンドウ自身を人間ならざるものに進化させるアイテムでした。
ネブカドネザルの鍵によって、ゲンドウは、銃撃で頭部を打ち抜かれて脳みそをぶちまけても死なない超人になり、さらに、エヴァ第13号機にダイレクトエントリーが可能になっていました。ネブカドネザルの鍵は、ゲンドウの最終計画アディショナルインパクトに欠かすことのできない超重要アイテムでした。
このネブカドネザルは、伝説の都市バビロンの王・ネブカドネザルから来ていると考えられます。ゲンドウにこの世界を支配し得るような超常の力を授けるということからも、伝説の都市バビロンの王として君臨したネブカドネザルの名前を冠しているは得心がいきます。
ゴルゴタオブジェクト
ゴルゴタオブジェクトは、シン・エヴァンゲリオン劇場版で初めて登場した、ゲンドウが目論むアディショナルインパクトの発動に必要不可欠なものでした。
ゲンドウは、ゴルゴタオブジェクトを、『人のならざるものが6本の槍とともに世界に遺したものであり、すべての始まりの場所、約束の地であり、人の力ではどうにもならない運命を変えらえる唯一の場所』と呼んでいました。が、抽象的でわかりにくい・・・
ゴルゴタオブジェクトは、ガフの扉の向こうに存在するマイナス宇宙の中にあり、そのゴルゴタオブジェクトには、エヴァンゲリオンイマジナリーが磔になっており、そのエヴァンゲリオンイマジナリーに槍を刺すことでアディショナルインパクトは発動していました。
「ゴルゴタ」の名前は新約聖書において、キリストが十字架にかけられた、エルサレムのゴルゴタの丘から来ていると考えられます。
一説には、この「ゴルゴタの丘」には、人祖アダムの遺体が埋葬されており、キリストによってアダムがよみがえり、すべての人が生かされるといわれているそうです。
ゲンドウが語っていた「すべての始まりの場所」「人の力ではどうにもならない運命を変えらえる唯一の場所」という呼び名に相応しい神聖な場所なのです。
真希波・マリ・イラストリアス
真希波・マリ・イラストリアスは、新劇場版：序まで、TVシリーズと同様の展開をみせていた新劇場版シリーズを、新しい展開に導くために投入されたキャラクターです。
新劇場版：Qまでは、そこまで目立った活躍はしませんでしたが、シン・エヴァンゲリオン劇場版においては、シンジがエヴァの存在しない世界を作りあげる過程を唯一側で見届けるという重要な役割を果たしました。
さらにラストシーンでは、エヴァの存在しない世界で大人になったシンジと二人で手を繋いで階段を駆け上がるという、「シンジ&マリ」エンドというまさかの結末となりました。
マリの名前の由来は、明確にはなっていませんが、イエス・キリストの妻といわれている、マグダラのマリアに由来している言われています。マグダラのマリアは、神であるイエス・キリストに仕え伴侶となった女性で、さらに「イエスの死と復活を見届ける証人」ともされています。
シン・エヴァンゲリオン劇場版において、エヴァの存在しない新世界を創造した碇シンジは、まさに「神」と呼ぶにふさわしい存在です。
世界創造の証人という役割をもつマリという異分子がエヴァの世界に現れたことで、エヴァの世界は終焉に導かれたとも考えられます。
心理学で最も信頼性が高いとされるビッグファイブ分析をベースに、あなたの性格に近いエヴァンゲリオンのキャラクターを診断します。１分以内で回答ができて信頼性が高い内容なので、是非受けて見てください！
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おわりに
エヴァの世界を形作っている概念のその多くが、旧約聖書など神話の世界がモチーフになっています。
その由来を理解することは、難解なエヴァの世界を紐解く一助になります。
まだまだ、拾い切れていない用語が多いので、今後も随時更新していく予定です・・・！
