呪術廻戦に登場する呪いの王・両面宿儺(りょうめんすくな)を神話・伝承をもとに徹底考察していきます!
日本書紀においては両面宿儺は略奪をを行う「異形の悪鬼」として描かれていました。一方で、飛騨地方の伝承では鬼を倒した「英雄」と語られています。
こういった神話や伝承などをベースに両面宿儺の正体・なぜ生まれたのかについて徹底考察していきたいと思います!
また、両面宿儺の術式や領域展開、虎杖悠仁についても深堀して解説しているので、本記事を読めば両面宿儺というキャラクターがより深く理解できますので、ぜひ最後までご覧ください!
目次
呪術廻戦・両面宿儺とは?
1000年以上前に存在した呪の王
©芥見下々/集英社
1000年以上前呪術全盛の時代に術師が総力をあげて挑んでも勝てなかったという最強の呪術師で、『呪いの王』。
腕が4本で顔が2つある異形の姿をした仮想の鬼神で、死後呪物として20本の指が残ったが消し去ることができず、特級呪物として残り続けていました。
虎杖悠仁が特級呪物「両面宿儺の指」を口にしたことで虎杖の体に宿りました。宿儺の器となり尚且つ自我を保てる逸材は1000年生まれてこなかったという。
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虎杖悠仁は「宿儺の器」として秘匿死刑にされるところを、『どうせ殺すなら全ての宿儺を取り込ませてから殺せばいい』と上層部に進言したことで、指を全て収集するまで生かされることとなりました。
虎杖が死ねば、受肉した宿儺も死ぬため、全部を取り込ませたうえで虎杖を殺して、1000年以上消し去ることができなかった宿儺の呪いを消そうというものです。
受肉する指の本数に応じて呪力が上がるため、虎杖悠仁が摂取する指の本数が増えれば増えれるほど、身に宿した両面宿儺の呪力が高まる危険性を孕んでいます。
ちなみに、宿儺の指8~9本分と言われている特級呪霊の漏瑚 (じょうご)は、渋谷事変で15本分を受肉した両面宿儺との戦闘で赤子をひねるように殺されてしまいました。
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虎杖悠仁との関係・結んだ契約とは?
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
両面宿儺は普段は虎杖悠仁のうちに潜んでおり、意識的に両面宿儺を表に出すことも可能です。
しかし初期、”縛り“を課さずに両面宿儺を表に出した後、虎杖悠仁が表に出ることに手こずり、その隙に両面宿儺が虎杖悠仁の心臓を取り出して人質にして入れ替わらせないという狡猾な方法を取りました。
そんな両面宿儺の人質作戦に乗らず、心臓が取り出された状態で両面宿儺と入れ替わったことで一時的に虎杖悠仁は死亡しました。
しかしその後両面宿儺のいる精神世界で、虎杖悠仁は両面宿儺と以下の2つの契約を結び生き返りました。(呪術師の契約は”縛り”となり破れば災厄の降りかかるため簡単には破れない)
- ①契闊と宿儺が唱えたら1分間体を入れ替える(その1分間宿儺は誰にも危害を加えない)
- ②この約束を忘れること
©芥見下々/集英社
虎杖悠仁は両面宿儺に対して、勝負して勝ったら無条件で生き返らせろと要求しましたが、瞬殺されて上記の条件で生き返ることとなりました。
虎杖悠仁が死ねば自らも死ぬため、両面宿儺は虎杖悠仁を生き返らせたりと一見協力的な姿勢を見せます。
しかし、虎杖悠仁が真人の無為転変によって改造された順平を救ってくれと両面宿儺に懇願した際は、下記の様な言葉を吐いて『ゲラゲラ』とあざ笑い、決して救おうとをしませんでした。
『断る』『愉快愉快』
『矜持も未来もお前の全てを捧げて!!』『俺に寄り縋ろうと何も救えないとは!!』
『惨めだなぁ!!』『この上なく惨めだぞ!!小僧!!』
©芥見下々/集英社
両面宿儺は自分の快・不快が全てであり、自分の興味がない他人を救ったり同情することはありません。そのあたりはどこまでいっても呪いなのです・・・
また、虎杖悠仁は指を1本ずつ摂取しているために肉体の主導権を奪われずに済んでいますが、一気に複数本の指を摂取すれば適応が追い付かず、一時的に肉体の主導権を奪われる危険性を孕んでいます。
渋谷事変では、漏瑚 (じょうご)によって一気に指10本を摂取された際は、一時的に両面宿儺に主導権を奪われました。
©芥見下々/集英社
その隙に両面宿儺の戦闘に巻き込まれて多くの民間人に犠牲が出たことで、虎杖悠仁は吐しゃ物を吐き、涙を流すほどにショックを受けていました。
両面宿儺は完全に虎杖悠仁のコントロール下に置かれているとは言えず、宿儺の器である虎杖悠仁は、いつ暴走するかわからない非常に危険な存在なのです。
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渋谷における両面宿儺の暴走を見た、呪術高専東京校2年の担任・日下部篤也(くさかべあつや)は、虎杖悠仁の処刑に賛成する趣旨の発言をするなど、後ろ盾である五条悟が封印されて不在の今、渋谷事変後の虎杖悠仁の立場はより危うくなる危険性が出ています・・・
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性格は傍若無人だが「武人」的な一面も
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
両面宿儺の性格・人間性については、「天上天下唯我独尊」「己の快・不快のみが生きる指針」と説明されており、『呪いの王』という異名に相応しい傍若無人で奔放な性格をしています。
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真人が魂の形を変える術式・無為転変で虎杖悠仁の中の両面宿儺の魂に触れてしまった際は、『俺の魂に触れるか』『分をわきまえろ痴れ者が』と真人を威嚇しました。
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また、漏瑚 (じょうご)によって10本の指を摂取して両面宿儺が表に出てきた際は、いきなり『頭が高いな』といって、いきなり漏瑚 (じょうご)の頭部を吹き飛ばすという傍若無人っぷりです。
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さらに表に出てきた両面宿儺に『もう1本の指のありかを教えるので、夏油様を開放してください』と土下座して懇願したミミナナに対しては、『たかだか指1,2本で俺に指図できると思ったか?』『不愉快だ』といってバラバラにして殺してしまいました。
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また、真人に改造された順平を助けてくれと懇願した虎杖悠仁を大声であざ笑ったり、入れ替わった隙に虎杖悠仁の心臓を抜き取って入れ替われないようにするなど、「呪い」ということもあり、狡猾で意地の悪い一面も持ち合わせています。
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渋谷事変における漏瑚 (じょうご)との戦闘では、フルボッコにしながら『ほら頑張れ頑張れ』『俺が飽きるまで何度でも付き合うぞ』と舐めぷする意地の悪さを見せました。
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しかし一方で単に意地悪い嫌な奴というわかけではなく、戦ったうえで強さを認めたものには素直に敬意を表する懐の深さも持ち合わせています。
散々ボコボコにして圧勝した漏瑚 (じょうご)に対しては、『人間、術師、呪霊』『千年前戦った中ではマシな方だった』『誇れオオマエは強い』と語りました。
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呪いの王からの褒め言葉を受けて漏瑚 (じょうご)は思わず涙を流していました。
両面宿儺は、漏瑚 (じょうご)との戦闘の際に『興が乗ってきた』として漏瑚 (じょうご)の土俵である火力勝負に持ち込むなど、戦闘自体を楽しみ、強いものに対しては素直に敬意を表する「武人」のような性格を持ち合わせています。
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五条悟が呪術高専のトップではないことを知って『強さで決まらない序列は退屈だ』と漏らしていたことからも「強さこそが第一」とする「武人」的な性格がうかがえます。
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伏黒恵を気にかけている?
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
基本的に「唯我独尊」な両面宿儺ですが、伏黒恵を常に気にかけています。
魂に触れてきた真人を切り伏せる際『唯一の好奇はただ一人』『それ以外は心底どうでもいい』と伏黒恵だけを好奇の対象として見ていることが明かされています。
また、渋谷事変で最強の式神・魔虚羅(まこら)による自爆攻撃で仮死状態となった伏黒恵みを『死ぬな』『オマエにはやってもらわねばならんことがある』と語り、反転術式で治療を施していました。
©芥見下々/集英社
両面宿儺が伏黒恵に「やってもらいたい」ことはまだ明かされていません。
おそらく禪院家相伝の術式・十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)が関係していると思われます。
十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)は影を媒体として10種の式神顕現させる術式です。式神を合体させたりと応用の幅の広い術式です。
両面宿儺も伏黒恵の術式に関して、伏黒に対して『宝の持ち腐れだな』と語っており、十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)を高く評価していることがわかります。
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両面宿儺の完全復活は指20本を摂取すればいいだけなので、復活するというよりも、”復活後”に両面宿儺が実行したいことに十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)が使えるということなのでしょう。
渋谷事変において、漏瑚 (じょうご)から『虎杖悠仁から肉体の主導権を得るための永劫の”縛り”を作れ』と言われた際に、『必要ない』『俺には俺の計画がある』と語っていたことからも、両面宿儺に何かしらの計画・狙い・目的があることがうかがえます。
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未だ謎が多く続報が待たれます。
両面宿儺の術式・領域展開
両面宿儺の術式は未だに多くの点で謎が残っています。
術式は能力を開示することで効果が向上するそうですが、漏瑚 (じょうご)との戦闘の際に『術式の開示など狡い真似はせん』と語り詳細は明かしませんでした。
解(カイ)
©芥見下々/集英社
宿儺の2種類ある斬撃のうちの一つで、通常の斬撃。
捌(ハチ)
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宿儺の2種類ある斬撃のうちの一つで、呪力差・強度に応じて一太刀で対象を卸す斬撃です。
開(フーガ)
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炎を生み出し、弓矢のように引いて放つ技です。
火力が得意な漏瑚 (じょうご)に火力勝負を持ち掛けて圧倒するほどに強力な技です。
領域展開・伏魔御廚子(ふくまみづし)
©芥見下々/集英社
対象に応じて解(カイ)と捌(ハチ)の2種類の斬撃を使い分け、敵を細切れにするほどに無数の斬撃を浴びせかける凶悪な技です。
両面宿儺の伏魔御廚子(ふくまみづし)は、ほかの呪術師と異なり結界で空間を分断しないそうで、結界を閉じず生得領域を具現化することはキャンバスを用いずに空に絵を描くに等しい神業だという・・・さすが呪の王・・・
加えて相手に逃げ道を与えるという”縛り”によって底上げされた必中効果範囲は、最大半径約200メートルに及びます。
渋谷事変では、必中効果の範囲内の呪力を帯びたモノには「捌(ハチ)」、呪力のないものには「解(カイ)」が絶え間なく浴びせられました。
最強の式神・魔虚羅(まこら)を倒すため、伏魔御廚子(ふくまみづし)の捌(ハチ)で絶え間なく斬撃を浴びせて弱らせたところを、 開(フーガ)でトドメヲ刺していました。
両面宿儺の術式に関する考察
宿儺の術式は調理に関係する?
©芥見下々/集英社
両面宿儺の術式の正体は未だ明らかになっていませんがファンの間では、料理や調理に関するものではないかという説があります。
以下に列挙するように、料理や調理にまつわるような描写が根拠とされています。
- ジャンプ本誌における118話の煽りが『万死の厨房』と記載
- 伏魔御廚子の「御厨子」とは「台所」という意味を持つ
- 解(カイ)・捌(ハチ)の描写が剣ではなく包丁
- 物体の切断に加えて「炎」も扱うことができる
- 宿儺は三枚おろし、味見、飢え等、調理や料理にまつわる言葉を使う
- 伏魔御廚子が大きな口・動物の骨と料理や食事を想起させるデザイン
弱肉強食の世界にあって、強きものが弱きものを食するというのは自然の摂理であり、宿儺が「強きもの」に敬意を表している点からも関連性が伺えますが、正体は定かではありません。
神話・伝承からみる両面宿儺の考察|正体は英雄?特級仮想怨霊?
両面宿儺は、奈良時代・養老4年(720年)に成立した歴史書である『日本書紀』に登場した異形の鬼が元ネタになっています。
日本書紀における宿儺は異形の悪鬼
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
両面宿儺は、日本書記において、仁徳天皇の時代に、飛騨国にスクナ(宿儺)という者がおり、1つの胴体に2つの顔、胴体のそれぞれに手足を持っていた。また、力が強くて俊敏で、左右に剣を帯び、4つの手に弓矢を使ったと記されています。
日本書紀において宿儺は、皇命に背いて人民から略奪することを楽しんでいたために、武振熊命(タケフルクマ)によって討伐されたとされています。
史記において、昔から朝廷に従わない豪族などは、異形の怪物として描写されてきました。
日本最強の鬼として有名な大江山の『酒呑童子』も、ヤマト朝廷に従わない大江山の製鉄民とされる説があります。
両面宿儺も、5世紀にヤマト政権の勢力が飛騨地方を制服しようとしてその地の豪族と接触した事実が反映されており、朝廷に従わない地方豪族がその原形とされています。
岐阜県の伝承における宿儺は神や英雄
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岐阜県の民間伝承では、両面宿儺は神や英雄など崇高な存在として伝えられるなど、日本書紀で伝えられる悪鬼とは全く正反対のキャラクターになっています。
丹生川の伝承によると、救世観音の化身として千光寺を開き、天皇の命により「七儺」という鬼を討伐したとされています。
関市下之保の伝承では、飛騨国に居た両面四臂の異人が、高沢山の毒龍を討伐したとされており、さらにこの宿儺とされる偉人は、飛騨より高沢山に移って観音の分身になったとされています。
日本書紀では悪鬼として征伐されていた両面宿儺ですが、岐阜県側の伝承では、逆に悪鬼や毒龍といった「邪」を討伐する英雄として語られているのです。
日本書紀は朝廷側の視点が描かれたものであり、朝廷に従わない豪族(宿儺)は『悪鬼』だったのでしょうが、一方で飛騨地方の人々からすれば、ヤマト政権の侵攻に対抗する豪族(宿儺)は国を守ろうとする英雄なのでしょう。
立場が異なるからこそ、これほどまでに正反対のキャラクーがそれぞれで成立したのでしょう。
宿儺の正体:「日本書紀」における畏怖のイメージが顕現した特級仮想怨霊?
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呪術廻戦の世界では「特級仮想怨霊」という人間から漏出した呪力の集合体が存在し、下記の様に語られています。
『呪霊は人間から漏出した呪力の集合体』
『実在しなくとも共通認識のある畏怖のイメージじゃ強力な呪いとなって顕現しやすい』
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つまり、トイレの花子や九尾の妖狐など共通のイメージのある「畏怖の対象」は『特級仮想怨霊』として顕現しやすいのです。
日本書紀に描かれた、民から略奪を楽しむ両面四臂の怪物・両面宿儺はまさに、”共通認識のある畏怖のイメージ“です。
両面宿儺の起こりは、この共通認識のある畏怖のイメージから生まれた『特級仮想怨霊』であったと考えることもできます。
これは、五条悟が両面宿儺のことを『仮想の鬼神』と表現していた点とも合致します。
また、虎杖悠仁は「1000年生まれてこなかった宿儺の器」とされていることから、1000年前にも宿儺の器が存在していたわけです。
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この器に入れるのが『両面宿儺という特級仮想怨霊』なのでしょう。
1000年前、呪術全盛の時代に圧倒的な力を見せつけた両面宿儺は、この日本書記から顕現した特級仮想怨霊を何らかの形で受肉した呪術師と考えることができます。
そしてその人物は、ヤマト朝廷の侵攻に対抗し、飛騨地方で英雄と称されていた豪族の末裔なのではないでしょうか。
両面宿儺の『痴れ者』『頭が高い』といった態度も「呪いの王」というよりも「豪族」だからこその態度とも取れます。
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116話に登場した裏梅という従者らしき存在も、豪族時代から仕えていた従者の可能性があります。
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奈良時代に成立した日本書紀に異形の怪物・両面宿儺として描かれたご先祖様。
理由は定かではありませんが、平安時代にその畏怖のイメージを特級仮想怨霊として顕現し、その呪霊を受肉して世界を転覆させようとた存在こそが、1000年前の両面宿儺の正体とも考えることができます。
まとめ:『”畏怖のイメージ”』と『”畏敬のイメージ”』
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両面宿儺の「解(カイ)と捌(ハチ)」による2種類の斬撃、「開(フーガ)」による炎の矢などは、神話における異形の怪物・両面宿儺のデザインが反映されています。
このことからも芥見下々先生が神話や真実を、物語の設定に組み込んでいるのは間違いありません。
その中で、朝廷勢力と争った飛騨の豪族という存在。
そこから生まれた朝廷に反旗を翻す両面宿儺という怪物神話。
朝廷側から見た畏怖のイメージを顕現し、その力を利用して朝廷に反旗を翻すというのは、なくはない話のように思えます。
また両面宿儺には、朝廷に反旗を翻した異形の悪鬼としての『”畏怖のイメージ“』と、地方を守った豪族としての『”畏敬のイメージ“』という「負」と「正」の両方のイメージがあり、互いに『”畏(おそれ)“』という漢字が含まれています。
この『「負」の「畏(おそれ)」』と『「正」の「畏(おそれ)」』それぞれがエネルギーとなり、より強力な『特級仮想怨霊』となったとも考えられます。
メタ的な設定を盛り込んでくる芥見先生ならやりそうかも・・・
未だ謎が多い両面宿儺ですが、今後明らかになる設定を踏まえつつ考察は更新していきたいと思います!