iPhoneやiPadなど革新的な製品を生み出したApple創業者のスティーブ・ジョブズ。
革新的な製品だけではなく、人生を変えるような数々の名言を残していることでも有名です。
今回は、そんなスティーブ・ジョブズの名言の中から、伝説とも言われるスタンフォード大学の卒業式でのスピーチの中で語られた名言をピックアップし、科学的な知見を交えて解説していきます。
目次
世界初の1兆ドル企業Appleを創った男

スティーブジョブズは1955年2月24日 アメリカ合衆国のカリフォルニア州サンフランシスコに生まれました。
サンフランシスコといえば現代の最先端テック企業が集まる地域であり、そのテック系企業のカリスマともいえるスティーブ・ジョブズがサンフランシスコ生まれというのは何か縁のようなものを感じます。
1976年に、もう一人のスティーブ、スティーブ・ウォズニアックと共同でアップルを創業。翌1977年に発売した「Apple Ⅱ」が大ヒット。パーソナル・コンピューターという概念を世間一般に浸透させました。
1984年に発売されたマッキントッシュは、先進的なGUIやマウスをもつ先進的なコンピューターであったが、深刻な販売不振に陥り、創業者でありながらジョブズはアップルを追われるという憂き目にあいます。
普通の人であれば、アップル時代に築いた巨額の資産で悠々自適な余生を過ごそうと思うところですが、ジョブズは立ち止まりません。
個人資産などを元手に、ルーカスフィルムのコンピューター・アニメーション部門を買収して、ピクサー・アニメーション・スタジオを設立。ビジネス向けのワークステーションを開発するNextを創業するなど、新たなチャレンジに邁進します。
2000年に、不振に陥っていたAppleにCEOとして完全復活。その後は、iPod・iPhone・iPadなどアップルを代表する革新的な製品を次々と生み出しました。
そして、2011年10月5日にすい臓がんが原因でこの世を去ります。去年56歳。
ジョブズが、Appleを追われてから設立したピクサー・アニメーション・スタジオは世界で初めてフルCG長編アニメーションを制作に成功。最初の長編アニメーション『トイ・ストーリー』は世界的な大ヒットとなり、その後も『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』など、大ヒット作を連発している、世界一のアニメーション会社です。そのピクサーの創造性の高さを下記記事で分析していますので、是非ご覧ください。

科学的にも正しい!スティーブジョブズの名言を解説
それでは2005年のスタンフォード大学の卒業式でのスピーチの中での名言を取り上げて、科学的な知見を交えて解説しつつ、人生で成功するための秘訣、より幸福に生きるためのヒントを紹介していきます。
名言①:人生の点と点をつなげる
ジョブズはスピーチの中で下記のように述べています。
将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。 ジョブズ氏スピーチ全訳
スティーブ・ジョブズは、大学で学んだ「カリグラフ」の智識が偶々、マッキントッシュ設計時に蘇り、非常に美しいフォントをもつコンピューターを作り上げたとしています。
当然、大学時代にカリグラフを学んだのは単純に、当時その瞬間に興味を惹かれたからで、カリグラフが将来どのように役に立つのかなど検討もついていなかったといえます。
未来を予測することは不可能です。変化の激しい現代において、5年、10年先の未来ですら全く予測がつきません。であるならば、ありもしない未来に振り回されるのではなく、自分の今の選択や行為を信じ、「今、ここ」に集中することが大事といえます。
アドラー心理学で有名な『嫌われる勇気』においても、過去も未来も考えることなく「今ここを生きる」ことが幸せな人生の条件としてます。また、Googleが社内研究で取り入れて一躍有名となったマインドフルネスの概念も、「今ここ」に集中するために、瞑想や呼吸法を実践することを推奨しています。
ジョンズ・ホプキンス大学の研究でも、不安や鬱への瞑想の効果が証明されています
ジョブズが禅の精神に傾倒していることは有名であり、このスピーチ内で瞑想を推奨しているわけではないですが、ありもしない未来を必死に予測しようとするのではなく、今やっていことを信じ、今ここに集中することが大事なのは間違いないでしょう。
ジョージタウン大学の研究で、天職との出会いは偶然に過ぎないという研究結果もあり、どんな経験や知識が将来に役立つかもわからないので、視野を広げて、今現在興味をもてる様々なことにトライしてみるとよいでしょう。いつか、自分がたどってきた点が結ばれ、最高の結果がもたらされるかもしません。
天職の見つけ方を知りたい人は是非下記をご覧ください。
https://animentalism.com/find-vocation/
名言②:アップルを追い出されたことは、最大の幸運
ジョブズはスピーチの中で下記のように述べています。
アップルから追い出されたことは、人生でもっとも幸運な出来事だったのです。将来に対する確証は持てなくなりましたが、会社を発展させるという重圧は、もう一度挑戦者になるという身軽さにとってかわりました。アップルを離れたことで、私は人生でもっとも創造的な時期を迎えることができたのです。 ジョブズ氏スピーチ全訳
これはまさに損失回避と呼ばれる心理現象を表しているといえます。
損失回避とは、人は無意識のうちに、得することよりも損することを回避しようとする意識が働くことを指します。
成功で得た地位が、足かせとなって挑戦することへの心理的ハードルが高くなることがあります。スティーブ・ジョブズは、Appleでの地位をを失ったことで挑戦への足かせがなくなり、Nextやピクサーの創立という新しい挑戦の後押しをしたといえます。
自ら創業したAppleを追い出されたことはジョブズにとって大きな挫折の経験だったでしょう。しかし、その挫折経験もリフレーミングして捉えなおすことで、新しい挑戦の機会を得たと捉えることができるのです。
大きな心理的なショックを経て、以前よりモ大きく成長できる心的外傷後成長(PTSG)という心理現象も研究によって明らかになっています。
挫折や喪失の経験は、新しい挑戦へのチャンスととらえることで人生を向上させることができるのです。
名言③:すばらしい仕事だと心底思えることをやること
ジョブズはスピーチの中で下記のように述べています。
自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事でも恋愛でも同じです。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。そして偉大なことをやり抜くただ一つの道は、仕事を愛することでしょう。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけない。ジョブズ氏スピーチ全訳
ジョブズのスタンフォードでのスピーチの中で、多くの人に影響を与えるのが、この好きなことを仕事にしようというメッセージ。このジョブズのスピーチに影響を受けて、現在の仕事を辞めて転職を決断した人も多いのではないでしょうか?
やりがいとを感じれる仕事が幸福な人生に重要なのは間違いないですが、好きや情熱を重視して仕事を選ぶと幸福度が下がるという研究もあるので、好きなことにこだわり続けることを手放しに奨励することはできないでしょう。
それよりも、まず今継続していることを好きなる努力をしてみることが一つの建設的な方法と言えます。それが「ジョブ・クラフティング」というテクニックで、今の仕事を異なる角度から捉え直して意義を見出すというものです。興味がある人は是非、下記をご覧ください。
好きになれない仕事を好きになる方法「ジョブ・クラフティング」
上述の通り、天職は偶然のたまものであるという研究もあり、また天職探しにはまって転職を繰り返してしまう「青い鳥症候群」といった病気も存在するので、こだわり過ぎないようにすることが大事といえます。
名言④:死を意識すること
ジョブズはスピーチの中で下記のように述べています。
自分はまもなく死ぬという認識が、重大な決断を下すときに一番役立つのです。なぜなら、永遠の希望やプライド、失敗する不安…これらはほとんどすべて、死の前には何の意味もなさなくなるからです。本当に大切なことしか残らない。自分は死ぬのだと思い出すことが、敗北する不安にとらわれない最良の方法です。我々はみんな最初から裸です。自分の心に従わない理由はないのです。ジョブズ氏スピーチ全訳
すい臓がんを患い、現実として死に直面したジョブズだからこそのメッセージです。
ケント大学の心理学者の研究によって、学生たちに「自分の人生がもう終わるとしたら?」など、死に対して考えさせたところ、ほんの1週間で学生たちのモチベーションや自尊心が増したうえに、他人への思いやりや協調性も上がり、全体的なストレスレベルも減って、よりリラックスできるようになっという研究があります。参考:幸せになりたければ、自分の死について書けばいい
死を意識することは逆にポジティブな気持ちになるのです。ジョブズがいう、「不安にならない最良の方法です。」という名言は科学的にも正しかったのです。
死をという人生の最大の困難を意識することで、現在の些細な悩みが小さいことのように思え、また人生の有限性を意識することで、より時間を有意義に使おうとする意識が働くと思われます。
名言⑤:自分の心と直感に従う勇気を持つこと
ジョブズはスピーチの中で下記のように述べています。
あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけない。それは他人の考えに従って生きることと同じです。他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。ジョブズ氏スピーチ全訳
自分の心の声に従うということは、目標設定における「内発的動機付け」と言えます。
コロンビア大学博士のハイディ・グラント・ハルバーソン氏は著書「意志力を使わずに自分を動かす」の中で、内発的動機付けについて下記のように述べています。
自らの意思で選んだ目標は、モチベーションと満足感を高めます。目標を自ら選ぶことで「内発的動機付け」と呼ばれる、賞罰に依存しない動機付けが生じます。内発的動機付けによって、楽しさ、好奇心、創造性、理解などが高まります。困難に直面しても簡単に諦めなくなり、パフォーマンスも向上します。内発的動機付けは、驚異的な力でわたしたちを行動に導くのです。「意志力を使わずに自分を動かす」p132
また、人生の幸福感においてコントロール感が重要という研究も多く存在しており、他人に自分の人生をゆだねないというのは科学的にも正しいといえます。参考:人生の幸せは、結局「セルフコントロール力」が決めるという話
また、直感を信じろの部分については、イスラエル大学の研究で、人間の直感の的中率が90%という結果も出ています。直観とは、脳が過去にインプットしてきた経験や学習のデータベースから、無意識に答えを引き出してくる超高速の脳の意思決定プロセスである。つまり直観は、記憶という根拠に基づいた、脳の論理思考の一種であり、合理的は判断プロセスなのです。人間の直観の的中率は90%!?メンタリスト DaiGoが教える『直観力』の鍛え方
名言⑥:ハングリーである。愚か者であれ。
“stay foolish Stay hungry“の言葉で締めくくられる、スタンフォード大学でのスピーチ。
この言葉の解釈には諸説ありますが、ハングリーであれというのは「現状に満足せずに貪欲であること」、愚か者であれというのは「頭でっかちに考えすぎるのではなく行動せよ」という意味合いで解釈できるでしょう。
好奇心旺盛な人は、新しい体験に貪欲であり、次々と新しい標的を見つけてチャレンジを続ける。近年の研究で、IQ以上に人生の成功において「CQ(好奇心指数)」が重要でないかという研究もあり、ジョブズの言う通りに、貪欲に求めて行動することは人生の成功に必要不可欠な要素なのです。参考:IQやEQと同じぐらい大事な「CQ(好奇心指数)」のお話
まとめ
スティーブ・ジョブズのスピーチの中には、科学的にも正しいことが証明されているものも多くあり、さすがカリスマ経営者というべきでしょうか。
ただ、ジョブズのスピーチで特に気を付けるべきてんとしては「好きなことを仕事」にするという個所でしょうか。この点は泥沼にはまると、不幸になりかねないので注意しましょう。