人生を変える心理学

世界のピクサーに学ぶ!組織における「創造力」の高め方

グローバル競争が激化する中、創造力を高めて、付加価値の高い製品を生み出すことは企業活動において必要不可欠なものとなっています。

しかし、オペレーション作業が得意で、上からの指示に従順に従うことを良しとしてきた日本人はオリジナリティや創造への挑戦が苦手といえます。これは不安を感じやすく、不確実性や未知の領域への挑戦に向かない日本人の脳が影響しているとも言えます。

高度経済成長時代には、人口増加と復興需要があり、それでも経済成長が可能でしたが、国が成熟し人口減少によって内需が減り続ける現代の日本は、高付加価値を生み出して外貨を稼ぎだす必要があります。

そこで本記事では、『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』など世界で大ヒットしたCGアニメーションを制作した、ピクサー創業者のエド・キャットムル著「ピクサー流 創造するちから」を参考に、組織としていかにすれば「創造力」を高められるか、心理学の知見も交えつつ解説をしていきます。

目次

世界的なアニメーション企業ピクサーとは?

CGを用いたアニメーションを得意としており、CGIを用いて長編・短編のアニメーションを制作しているアニメーションスタジオです。

ピクサーは1986年2月3日に創立され、本社はカリフォルニア州メリービル。2006年5月5日からは、ウォルト・ディズニー・カンパニーの完全子会社となっています。

1988年に発表した短編作品『ティン・トイ』で、第61回アカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞し、1995年にはディズニーとの共同制作で世界初のフルCGによる長編アニメーションによる『トイ・ストーリー』を発表。全世界で約3億6200万ドルの興行収入を上げる大ヒット作となり、これがピクサーを世界中に知らしめる出世作となった。

その後も1999年に『トイ・ストーリー2』では第57回ゴールデングローブ賞最優秀作品賞を受賞し2003年には『ファインディング・ニモ』で第76回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞するなど、大ヒット作を連発している。

ピクサーの主要作品は、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズと共同制作をしており、開発やアニメーション制作、ポストプロダクションなどの制作面はピクサーによって行われ、配給や販売促進はディズニーによって行われている。

参考:ピクサー・アニメーション・スタジオ – wikipedia



ディズニーに憧れたエンジニアのエド・キャットムルが創業

ピクサーは、1979年にルーカスフィルムにおいてエド・キャットムルを雇用して創立したコンピューター・アニメーション部門が前身となっています。

エド・キャットムルは、ユタ大学にて物理学と情報工学を学位を取得したエンジニアリング畑の人材である。学生時代は、CGの開祖であるアイバン・サザランドに師事、現代のCG制作でも利用されるテクスチャマッピング、Zバッファ、Bスプラインの基礎発見を達成するなどの成果を上げています。

エド・キャットムルはユタ大学での研究について下記のように延べ、その冒険的な研究実験の場がピクサーで環境づくりの参考になったとしています。

私が挑戦した研究が物になったの、守られ、異種混合で、非常に挑戦しがいのある環境に身を置いていたからだ。実りある実験の場をつくるためには、多様な考えをもった人材を集め、その自主性を後押しすることが必要なことを学部の指導者たちは、わかっていた。フィードバックをくれることも必要だったが、一歩引いて好きにやらせてくれることも必要だった。・・・物事を創造的に考える人々をどのように導き、刺激するか、私がユタ大学で学んだ最も大切なものは、先生たちが示してくれたそのモデルだった。『ピクサー流 創造するちから』p30

ピクサーのアニメーションは、情熱と才能をもったメンバーが遺憾なく力を発揮して作り上げられる総合芸術です。エドは、情熱と才能をもつメンバーが力を創造性を発揮できるうえで環境がいかに大切で、またその環境を実現するために必要な要素をユタ大学の研究室で学んでいたのです。

エドは、幼少期からディズニーアニメーションが好きで、アニメーション制作に興味をもっていたが、自分自身にはアニメ制作の才能よりも物理や数学領域に才能があると感じ、アニメーションへの夢は封印していた。(子供のころから尊敬する人は、ウォルト・ディズニーとアインシュタイン)そして、CG技術との出会いがエドをCG技術を活用したアニメーション制作という、新たな切り口から、子供のころに封印した夢への再チャレンジを決意させました。

エドは、ユタ大学を卒業した時点で、初のコンピューター・アニメーション映画を作るという目標をはっきりと見定め、それに人生を捧げる覚悟ができていたという。

しかし、1970年代は長編どころから短編作品ですら、コンピューターでアニメーションを制作するなどは到底あり得ない話で、実現できるまでには10年以上の歳月がかかることが予想されました。実際に、エドは自身のCG技術を、ディズニー・アニメーションに売り込んだが、全く相手にされませんでした。

その後、映画におけるコンピューター技術の活用に興味をもっていたジョージ・ルーカスと出会い、ルーカスフィルムに移籍して、コンピューター・アニメーション部門を設立。これが後のピクサーの前身となります。

ルーカスフィルム再編をきっかけに独立することとなり、路頭に迷っていたピクサーを、当時アップルを追われて次なる可能性を模索していたスティーブ・ジョブズが買収。「ピクサー」と名付けて独立会社となりました。

エドがフルCGのアニメーション制作を決意して、それが「トイ・ストーリー」として結実するまでに20年以上の歳月が掛かっています。ピクサーはスティーブ・ジョブズに買収された直後は、ピクサー・イメージ・コンピューターというCG制作用の専用コンピューターを政府機関などに販売していました。そういった紆余曲折を経ながら、20年以上も夢を追い続けた結果、エドは自らのビジョンを実現しました。

エドは創造性について、著書の中で下記のように述べています。

経験から言えば、創造的な人々は、長年の献身的な努力を通じてビジョンを見出し、実現している。その意味でいうと、創造性は短距離よりもマラソンに近い。

20年以上もかけて自らのビジョンを実現させた、エドならではの言葉である。スティーブ・ジョブズも最初は、電話ハッキングデバイス「ブルーボックス」の販売から起業を始めており、その何年も後にアップル・コンピューターやiPhoneというビジョンを見出ししている。最初から絶対的なビジョンが存在することは稀で、献身的な努力を続けて、前進を続ける中でビジョンを見出すことができるといえます。

40年以上も組織的な創造力の向上を追求

エドは特に『トイ・ストーリー』の成功後、急拡大したピクサーをマネジメントし、創業者である自分自身がいなくても継続していけるような組織・文化作りに腐心し続けた。

エドは、『トイ・ストーリー2』の成功後、20年来の夢を実現させたのちの心境を下記のように語っている。

私はピクサー創立以来、ほとんどの間社長を務めていた。会社が好きだし、会社が象徴するものが好きだ。それでもやはり、自分の職業人生の目標だったものを達成した後、目標を見失ってしまったことは否定できない。『ピクサー流 創造するちから』p11

その後、シリコンバレーの企業の栄枯盛衰を見るにつけて、下記のような考えを抱くようになったという。

私が興味を引かれたのは、企業の盛衰や、技術革新が起こるたびに業界の勢力図が塗り替えられたことではなく、企業のリーダーが競争に気を取られるあまり、そのとき働いていた破壊的な力について一度も深く考えなかったことだ。『ピクサー流 創造するちから』p13

あれほど、多くの企業を破綻させた力からピクサーを守りたいという気持ちが、私に新たなやりがいを与えていた。私はリーダーとしてやるべきことをはっきりと自覚し始めていた。そしてどうしたら会社の成功だけではなく、クリエイティブな組織文化を創造し、持続させることができるかを全力で学ぶことにした。『ピクサー流 創造するちから』p14

上記のように、エドは、クリエイティで持続性のある組織づくりを主眼に置き、組織づくりに40年以上コミットしてきたのである。その中で鍛え上げたピクサー流の創造力を醸成方法を以下で紹介していく。



ピクサー流の組織における創造力の高め方

第一に最高のチームを作ること

ピクサー創業者のエド・キャットムルは下記のように述べています。

いいアイデアを二流のチームに与えたら台無しにされる。二流のアイデアを優秀なチームに与えたらそれを修正するか、捨ててもっといいものを思いついてくれる。・・・いいアイデアよりも、適切な人材と適切な化学反応を得ることが重要なのだ。『ピクサー流 創造するちから』

最高の作品を作りあげるには、一つの素晴らしいアイデアよりも、チームとしてのパフォーマンスにより気を配り、メンバーが互いに補完し合うようなチームを作りこそ最優先にすべきとしています。

企業活動は基本的に、さまざまな部署が連携して、一つの製品を作りあげています。最高の製品を作り上げるあたって重要なのは、最高のアイディアではなく、それを志向し実現する最高のチームなのです。

率直さをもってフィードバックする

エドは著書の中で下記のようの述べている。

複雑で創造的なプロジェクトを引き受けた人は、その過程のどこかで道を見失う。・・・脚本家や監督は、一度は見えていたはずのものが途中で見えなくなる。以前はちゃんと森が見えていたのに、今は木しかみえない。ディテールに寄りすぎて全体が見えなくなり、そのせいで、これだという方向に自信をもって進むことができない。『ピクサー流 創造するちから』p132

人間には確証バイアスと呼ばれる、自分の信じる仮説を論の根拠の正しさを証明をする情報ばかりに目がいき、それ以外の情報に目がいかなくなるという心理現象がある。

監督や脚本家という当事者は、当事者すぎるゆえに視野狭窄に陥りがちである。それを防ぐために外部からの率直フィードバックを受けて、常にアイディアを外部からの評価・批判にさらして、ブラッシュアップさせていく必要がある。

ピクサーでは、ブレイントラストという、おおよそ数か月ごとに集まり、製作中の作品をスタッフ同士で忌憚なく評価する仕組みがあります。スタッフを一堂に集めて、問題の発見と解決という課題を与えて、率直に話すように促します。

エドは、ブレイントラストについて下記のように述べています。

ピクサーの創造的プロセスにとって、率直さほど重要なものはない。それは、どの映画も、つくり始めは目も当てられないほどの「駄作」だからだ。・・・ピクサー映画は最初はつまらない。それを面白くする。、つまり「駄作を駄作でなくする」のがブレイントラストの仕事だ。『ピクサー流 創造するちから』p130

忌憚のないフィードバックと励ましを受けて、何度も作り直すプロセスを経て、欠陥だらけだった物語は、感動的な作品にしてあげています。

さらに、ブレイントラストは問題を診断するが治療法を提示しないというのが重要である。作品の弱い部分を指摘して、提案や助言はするが、その先どうするかは監督に任される。そのため、多数決の民主主義で製品を作るという愚を犯さずに済むのである。

あくまでピクサーの監督は、監督自身が思いつき、監督自身が撮りたくてしかたのない映画を撮っている。そのプロセスにおいて、監督も含めて制作チームには自由と責任の両方を与えられている。それゆえに、監督がその情熱のあまりに問題に気づけないという事態が起こる。その時に相談相手になるのがブレイントラストの仕組みである。

上記に挙げたブレイントラストこそがピクサーの創造的なプロセスの要である。

エドは、下記のようにも述べている通り、率直に批判を行うこと、素直に批判を受け入れることは難しいと認めている。

グループの集合知と率直な意見に頼ることができたら、より正しい意思決定ができるようになる。正直さから生まれた情報をいかに価値があるか、その重要性をいかに高らかに宣言しても、自分自身の不安や自己防衛本能がブレーキをかけることがよくある。この現実に対処するには、正直になることを妨げる障害から自らを開放する必要がある。『ピクサー流 創造するちから』p124

正直にフィードバックをすることが難しいとしたうえで、下記のような忌憚のないフィードバックを促す方法をとっています。

  • 率直な会話、活発な議論、笑い、愛情の4つの要素が必要不可欠な要素として定義。
  • 「正直さ」という言葉を「率直さ」という道徳的な意味合いの小さい別の言葉に置き換えること。正直であるかよりも率直であるかどうかをテーマにしたほうが議論がしやすくなる。
  • CEOのトムやゼネラルマネージャーのジム・モリスなどトップ自らが、率直な意見の飛び交う環境を整えるために、すべてのブレイントラストに参加して環境づくりを行う。
  • CEOなど、トップ自らが、率直な意見の飛び交う環境を整えるために、すべてのブレイントラストに参加して環境づくりを行う。
  • 建設的な批評は具体的に行う。建設的な批評をピクサーでは「グッドノート」と呼び、グッドノートは何よりも具体的であることが求められる。
  • 上記のようなポイントを踏まえながらも、トムはブレイントラストは万能の装置とは考えておらず。一度設置したら放置せず。組織の力学の変化に合わせて、常に忌憚のない率直なフィードバックが行われているか目を光らせ、必要な調整をしながら守り続けるしかないとしています。

    失敗を恐れない環境を作る

    エドは失敗に関して下記のように述べている。

    恐れから失敗を避けようとする組織文化では、社員は意識的にも無意識的にもリスクを避ける。そして代わりに、過去にやって合格点だった安全なことを繰り返し行おうとする。その成果は派生的なものであり、革新的なものではない。『ピクサー流 創造するちから』p157

    新しい試みを恐れる人も多いが、本当はその逆のアプローチをとるほうがはるかに怖い。リスク回避も度が過ぎると。企業の変革を止め、新しいアイディアの拒絶につながる。企業が落ち目になるのはほとんどそのためであって、限界に挑戦したり、リスクを負ったり、失敗を恐れなかったからではない。失敗する可能性のあることに取り組むのが、本当に創造的な企業なのだ。『ピクサー流 創造するちから』p166

    安全策ばかりに陥り、失敗する可能性のあるチャレンジングなアイディアに挑戦をしない企業はゆるやかに衰退していく。日進月歩で新しいテクノロジーが生まれる現代にあっては、現状維持は衰退とイコールであり、企業は常に一歩も二歩も先の未来を予測して、その実現にチャレンジしていく必要があります。本当に革新的なものは安全領域ではなく、より不確実性の高い未知の領域に踏み出していかなければ手にすることができない。そのためには、失敗に対するハードルを極力下げてチャレンジの回数を増やしてく必要があります。

    失敗を恐れない環境を作るためにピクサーは、リーダー層が部下と腹を割って話すことを推奨しています。過去の失敗も危機も、会社の状況もオープンに話すことで、信頼感を醸成し、また失敗が憎むべきものではなく、成長へのきかっけという認識を強めることができる。

    また、部下が失敗したときには、しっかりとサポートして一緒になって解決をすることで、部下の抱く失敗への恐れをやわらげ、同時にリーダーへの信頼も厚くなる。ピクサーでは会社の文化を作るリーダーに向けて、実績のある監督について、その経験値を吸収できるような師弟教育プログラムを作成し、その教育に力を入れています。

    エドはリーダーの役割について下記のように述べています。

    問題を一つ残らず防ごうとするのではなく、スタッフの善意を信じ、彼らが問題を解決したいと思っていると信じるべきだ。実際に。そう思っている場合がほとんどなのだから。責任を与え、失敗させ、自ら解決させる。恐れには必ず理由がある。リーダーの仕事はその理由を見つけて対処すること。p179

    ピクサーでは失敗を奨励する文化が浸透しているため、『トイ・ストーリー3』が制作から公開まで一分の失敗もなかったことを素直に称賛したところ、逆にスタッフの気分を害したそうです。失敗しなかったことを、スタッフたちは、挑戦や努力の不足、もっと限界に挑戦すべきだったと捉えてしまったのです。



    新しいアイディアを守る

    エドはピクサー映画の最初期のアイディアについて下記のように述べています。

    誰かが思いついたばかりの独創的なアイディアは、まだ不格好で曖昧で、確立されていない。そこがまさしく一番ワクワクするところだ。このもろい状態のときに、秘められた可能性を見抜けない人々、進化するまで待てない批判的な人々に見せれば潰されてしまう。すごく面白いものにするためには、あまり面白くない段階が必要なことを理解できない人々から新しいものを守るのは、リーダーの役目だ。『ピクサー流 創造するちから』p184

    上述した、作品に対して率直なフィードバックをするブレイントラストなどのプロセスを経て、醜く脆弱なアイディアは、背骨のしっかりとしたテーマや魂の宿ったキャラクターを獲得していく。これがピクサーの創造のプロセスであり、発案者に熱意と情熱があれば、そのアイディアを最初期の醜い赤子の状態から守る必要があるのです。そういった新しいものに挑む者をサポートするのリーダーなのです。

    変化と偶発性を受け入れる

    人は成功にしがみつく生き物であるとエドは述べている。一たび成功を収めれば、そのやり方に固執し、やり続けてしまう。そして成功するにつれ、変わることに対して強い抵抗感を感じてしまうのである。特に利己主義な人間は変化を嫌うが、変化を嫌うことへの自覚のなさがそれを助長してしまうのです。

    ピクサーの成功に関して下記のように述べています。

    偶発的な出来事が追い風になったことを認めないわけにはいかない。自分が天才的な行いをしたと考えるのではなく、自分の幸運を認めることで、より現実に沿った評価や判断ができるようになる。・・・変化をは避けようがないのだとしたら、変化を止めて自分を守ろうとするか、変化を受け入れてそれを武器にかえるかのどちらかだ。『ピクサー流 創造するちから』p224

    変化を必然であり、現状に固執するのではなく、絶えず変化する現実を受け入れて、その変化をむしろ利用することに意識を集中させる。(現状を守ることに集中するのではなく)そして、またあらゆる事象に偶然性が紛れ込んでおり、偶然性の作用を無視すれば評価や判断を見誤る危険性があるのです。

    認識外の隠れしものを認識する

    人間の脳は目の前の事象は40%程度しか情報を取り込んでおらず、残りはすべて過去の自分のメンタルモデルを当てはめて現状を認識しています。つまり、同じ事象をどう解釈するかは個々人のもつメンタルモデルに左右されてしまうのです。そのせいで、認識の違い、意見の食い違いや見解の相違が生まれるのです。

    確証バイアスといって、自分の信じる仮説やアイディアを保証する情報以外は認識から外れてしまう認知の歪み研究によって明らかになっています。まさに、人が既存のメンタルモデルに沿って物事を見て、判断していることの現れが確証バイアスといえます。

    エドは、認識外の隠れしものが存在することをしっかりと認識することが重要だと述べています。

    台頭するシリコンバレー企業のリーダーたちが、なぜあれほど判断を誤ったのあ、しかもその当時においてさえまちがいは明らかだった。彼らには経営能力と壮大な野心があり。本人は判断をまちがえたとも自分を尊大だとも思っていなかった。それでも勘違いは生まれる。頭脳明晰なリーダーでさえ、成功し続けるために必要な何かを見失う。私はこう思った。自らの視野の現狩りを知り、うまく付き合わなければ、ピウサーもいずれ同じ勘違いをするようになると。”隠れしもの”と私が呼ぶものに対処する必要があった。『ピクサー流 創造するちから』p226

    自分が見て知っていることが不完全だと認めるならば、その認識を高める努力をすべきだろう。好むと好まざるとにかかわらず、隠れた問題が存在することを頭のどこかで確信することで、マネージャーとして一回り成長できたと思う。『ピクサー流 創造するちから』p227

    また、認識のメンタルモデルだけではなく、階層的な組織構造が真実を隠してしまうことが往々にしてある。例えば、役職があり立場が上にあれば、誰もがその人物に気を使い、より自分自身をよく見せようと努力をするようになる。また組織が大きくなれば、会社全体を把握することも次第に困難になってくる。それゆえに、リーダーは謙虚さをもって、自分自身が認識できない隠れしものの存在を自覚し、できる限り把握する努力をすることが重要といえます。

    ピクサーの特別性について、エドは下記のように述べています。

    ピクサーを特別足らしめているもの、それは「問題は必ず起こる」と思って仕事をしていることだ。問題の多くは隠れて見えない。それを明るみに出すことが自分たちにとってどれほど不快なことであっても、その努力をする。そして問題にぶち当たったときは、全社全精力を挙げてその解決にあたる。p10

    つまり、隠れしものが存在する以上、事前にすべてのリスクを把握して潰しておくことは不可能であり、非現実的といえます。それよりも、あらかじめ隠れしものの存在を認識し、問題は起こり得ると考えておけば、いざ実際に問題が起こった時に心的動揺を減らし、また問題を想定してスケジュールにバッファを持たせておくなどの対策をとることが可能になります。

    自分はすべてを把握しているという驕りを捨てて、隠れしものに意識を向けることが重要といえます。



    その他参考になるピクサーの創造性の高め方

    プロセスを信じる

    ピクサーの創造において重要となった考え方に「プロセスを信じる」がありました。

    複雑性の高い映画製作において、自分たちの進めるやり方を信じることで、不安を伴う未知の領域でのチャレンジにも前進する力を得ることができるという利点がありました。

    これは目標達成において、ゴールした状況を思い描くのではなく、そこに向けたプロセスをイメージしたほうが、未来の自分との距離が縮まり、目標達成への意欲が高まりやすいという効果が期待できます。非常に理にかなった考え方といえます。

    品質は最良のビジネスプラン

    『トイ・ストーリー』などピクサーの物語の多くをを手掛けたジョン・ラセターは、「品質は最良のビジネスプラン」としている。

    品質は、行動の結果ではなく、どう行動するかを決める前提条件であり心の持ちようだと彼はいう。品質が大事だと誰もがいうが、いう前に実行すべきだ。品質は日常の一部であり、考え方であり、生き方であるべきだ。最高品質の映画しかつくりたくないと社員が訴えたとき、そしてその理想に対する覚悟を証明するために限界に挑んだときピクサーのアイデンティティは決まった。『ピクサー流 創造するちから p121』

    最高品質の映画しかつくらないというアイデンティティの公言は、社会心理学でいう「コミットメントと一貫性の原理」を利用したアイデンティティづくりといえる。一たび特定のスタンスをとると、外的にも内的にも、そのスタンスと一貫した態度、行動をとるように強制力が働く心理現象である。

    最高品質ドリブンでモノづくりを行うという「覚悟」は、ピクサー社員を縛る行動原理となったといえます。



    おわりに

    ピクサーの創造する力の核にあったのは、情熱と才能をもつ優秀なメンバーが力を発揮できる環境づくりにありました。

    一つの天才的なアイディアに固執するのではなく、醜いアイディアをブラッシュアップして最高の作品に昇華させることができ、またダメなアイディアをときには捨てるという英断ができるチーム作りが重要です。チームには常に、忌憚のない率直なフィードバックが必要であり、建設的な批評を通して、アイディアは名作映画に生まれ変わっていくのです。

    また、エドは、創造のプロセスにおいて重要なことは、不確実性や偶然性、認識の歪みの存在などを自覚し受け入れて、未知の領域に足を踏み出し続けることとしています。創造性と失敗は常に隣り合わせであり、失敗への恐怖が人の前進を止める原因となります、それちえに、失敗に対するハードルできる限り下げて恐れずに挑戦できる環境づくりが重要といえます。

管理人
のびぃ
早稲田大学卒。大学時代、新世紀エヴァンゲリオン・攻殻機動隊・風の谷のナウシカを身体論的に論じた論文とか書いたり、アニメをテーマにした授業を喜んで履修してました。 ハード過ぎる職場でメンタル病んだのをキッカケに心理学にのめり込む。元来のアニメ好きが高じて、アニメを通して人生に役立つ心理学を学ぶアニメンタリズム運営しています!アニメキャラ考察を楽しみつつ、心理学の智識も学べる一石二鳥系のメディア。
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