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逆境に負けない力「レジリエンス」とは?ワンピースのルフィに学ぶ

みなさん「レジリエンス」という言葉をご存知でしょうか?

レジリエンスとは「回復力、復元力」、そして「困難な状況に耐え、素早く回復する能力」を示します。

長引く経済不況やグローバル競争が激化する中、高い成果を出し続けるためには、困難や苦境に立ち向かうための心の強さが必要不可欠です。

その中で、「レジリエンス」は心身の健康を保ち逆境や困難にも負けない力として、現代社会において必須のメンタルスキルといえます。

そこで、今回はワンピースの主人公「モンキー・D・ルフィ」が経験した最大の挫折からの復活を参考にしつつ、レジリエンスの基本と発揮の仕方を解説していきます!

逆境に負けない力「レジリエンス」とは?

心理学の分野におけるレジリエンスとは、どういったものか解説をしていきます。

心理学における「レジリエンス」とは?


「レジリエンス」とは、もともと環境学で生態系の環境変化に対する「復元力、回復力」を表す言葉です。近年では、物理や環境学だけではなく、組織論や社会システム論など、多様な分野で使用される用語となっています。

「復元力」「回復力」が転じて、心理学においてレジリエンスは、心が折れそうになるような逆境に立ち向かう力、または挫折から再起する力という意味をもちます。

「逆境やトラブル、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理プロセス」と説明することもできます。

有名企業でも活用されているレジリエンス

ゴールドマン・サックス、Google、Microsoft社など海外の有名企業において、レジリエンスを管理職・リーダー用の研修に用いる企業も増えてきています。

逆境や困難の中においても強い心を保ち続けることは、多くのストレッサー(ストレスの元となる外部の刺激)が存在する現代社会で、高い成果を上げ続けるために必須のスキルであり、現代において「レジリエンス」が求められる所以でもあります。



レジリエンスを鍛えるには?

具体的にレジリエンスを鍛えるにはどうしたら良いのでしょうか?

久世浩司氏著書の「世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方 (実業之日本社 2014)」によると、レジリエンスには、「ネガティブ感情に対処する」「レジリエンス・マッスルを鍛える」「逆境体験を教訓化する」という3つのステージがあるとしています。以下では、それぞれのステージについて説明していきます。

1.ネガティブ感情に対処する

気楽なルフィ(C)尾田栄一郎/集英社

逆境や困難に立ち向かう上で、第一に優先すべきことは、心を支配する不安や恐れ、憂鬱感、落ち込んだ気持ちから脱出をすることです。

逆境や困難な状況にあっては、気分が落ち込み、心は下降線を辿ってしまいます。この下降線を底打ちさせて、上昇する下地を作る必要があります。

そのためには、運動や音楽などで好きなものや得意のことに没頭して、フロー体験をしたり、マインドフルネス瞑想や筆記開示など心理テクニックを駆使しして不安に対処すると良いとされています。

2.挫折から立ち上がるレジリエンス・マッスルを鍛える

不安や憂鬱な感覚から立ち直り、再起を図るには「レジリエンス・マッスル」を鍛え上げる必要があります。

レジリエンス・マッスルとは、英国のイースト・ロンドン大学のイローナ・ポニウェル博士が提唱した概念で、「再起するための筋肉」という意味です。

ストレス度の高い体験から心身を守る緩衝材の役割を果たします。以下では、そのレジリエンス・マッスルを鍛える耐えに必要な要素を解説していきます。

①自己効力感を高める

運動や瞑想を通して、心の冷静さや平穏を取り戻したら、自分ならできる!という自己効力感を身につけていくことで、大きく上昇気流に乗ることができます。

自己効力感高めることこそが、困難な目標に向かって這い上がる筋力である「レジリエンス・マッスル」を鍛える上で、重要な要素です。

自己効力感の研究は、スタンフォード大学の心理学部教授のアルバート・バンデューラ博士によって大きく発展し、その定義は以下のようにされています。

その人の持つ目標や成果の達成への自己の能力への確信と信頼

引用:久世 浩司 『レジリエンスの鍛え方』(実業之日本社,2014,108項)

つまり、自己効力感とは、ある目標や行動において「これくらいならできる!」と感じる心持ちのことを言います。

この自己効感を身に付けるには、本当に些細なことでも構わないので小さな成功体験を積むことが重要です。

例えば、水泳に苦手意識のある人は、立ち泳ぎでも溺れずに泳ぎ続けることができるという体験が、次第に水泳に対する苦手意識を薄れさせ、自己効力感を高めます。この自己効力感が、立ち泳ぎだけではなく、クロールや平泳ぎといったより難易度の高い泳法に挑戦する足がかりとなるのです。

また他者からの「あなたならできる」「才能があるよ!」といった励ましも自己効力感を高める効果があります。これを言語的説得とも言います。自らの背中を押してくれる仲間やサポーターを作ることも自己効力感を高める上では重要です。

一連の体験の中で、自らの強みを活かすことも自己効力感を高める上でも重要です。自分の苦手なことで頑張っても成果が出るまでに時間がかかります。一方で、自分の得意なことであれば、より少ない労力で高い成果を出すことができ、これがレジリエンス・マッスルの強化に繋がります。

自分自身の強みがわかないという人は、VIA-ISなど診断ツールなどを活用すると良いでしょう。

②心の支えとなるサポーターを見つける

レイリーにしごかれるルフィ引用:(C)尾田栄一郎/集英社

家族、友人、恩師などの自分にとって大切な人は、折れそうな心を支えて、早期に立ちあがるに必要な叱咤激励をしてくれる存在です。

アップルの創業者スティーブ・ジョブズも、一時期の不振の際は、自らの妻や子供など、家族との親密なつながりが、ジョブズの心の支えとなりました。

自分1人の力だけではなく、周囲の力を積極的に頼ることもレジリエンスを発揮するうえで重要な要素です。

③感謝の気持ちをもつ

逆境を体験した辛い時期を乗り越える上で、感謝の気持ちを持つことは非常に重要です。

感謝の効果は科学的にも証明されており、ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマンの研究では、さまざまな心理テクニック(自分の強みを活かすとか)を実践たところ、「感謝の日記」を毎日つけた人が、もっとも幸福度がアップしたという研究結果が出ています。

感謝のポジティブ感情を高めることで、レジリエンス・マッスルを大きく鍛えることができます。

3.逆境体験を教訓化する

最後には、自分が経験した逆境から学びを得て、その体験に意味を見いだすことで、逆境から再起しさらなる成長を得ることができます。

そのためには下記のことが重要とされています。

①被害者でなく、再起した者の立場で物語を形成する
②精神的な落ち込みから抜け出したきっかけは何かを回想する
③ゼロの状態からいかにして這い上がってきたのかに着目する。そして逆境物語を俯瞰して意味を探求することが有効である。
引用:久世 浩司 『レジリエンスの鍛え方』(実業之日本社,2014,250項)



挫折から立ち直ったルフィのレジリエンス

それでは、実際に「レジリエンス」を発揮した例を、ワンピースのルフィの参考に見ていきましょう!

モンキー・D・ルフィの最大の挫折

引用:『ONE PIECE』573 話より (C)尾田栄一郎/集英社

ルフィの最大の挫折・失望の経験といえば、頂上戦争編で兄ポートガス・D・エースを救い出すことがでずに、目の前で死なせてしまったことでしょう。

作中でもそれまでに、ルフィが敵に敗北をした経験は何度かあります。アラバスタ編ではクロコダイルに2度敗北しており、ウォーターセブン編では大将の青キジに惨敗し、シャボンティ諸島編では、バスターコールで登場した大将黄猿、パシフィスタ、戦桃丸の前に歯が立たずに一味を散り散りにされてしまいます。

ただ、最終的に自分自身の力が全く及ばずに、大切な人を(それも目の前で)失ってしまった経験は頂上戦争編が初めてでした。

目の前でエースを失ったルフィはそのまま気を失い、ジンベエやハートの海賊団の手助けもあり、辛くも女ヶ島まで逃れます。そして、目を覚ましたルフィはエースを失った現実に改めて直面し、自暴自棄になり、我を忘れて暴れまわります。

そして、自らの力のなさを嘆き「何が海賊王だ・・・俺は弱い!!!」と叫び、泣き崩れます。

泣き崩れるルフィ引用:『ONE PIECE』589話より (C)尾田栄一郎/集英社

これまで、ルフィは自らの力に絶対の自信を持ち、どんなに強大な敵を前にしても「おれは海賊王になる男だ!」と言い放ってきました。そのルフィが初めて発した「弱音」ということもあり、読者にも衝撃を与えたシーンです。

強大な敵を目の前に自分の力が全く通じず、目標であり道しるべであった兄のエースを失ったルフィは、完全に自信を失ってしまいました

ルフィが発揮したレジリエンス

ルフィは、メンター的な存在であるジンベエ、師匠となるレイリーのサポートもあり、この状況から立ち直ります。

ジンベエは、自暴自棄になり暴れまわるルフィに冷静になるように叱咤激励し、仲間の存在を思い出させます。

そこでルフィは、自分自身は一人ではない大切な仲間がいることに気づきました。自分自身が絶望的な状態であってもまだ、仲間に恵まれている。この恵まれていることの実感が人の心の中に感謝の念を呼び起こします。

仲間がいることを思い出すルフィ引用:『ONE PIECE』590話より (C)尾田栄一郎/集英社

元々ポジティブなルフィでしたが、この仲間の存在への気づきが「レジリエンス・マッスル」の強化に繋がり、復活への足がかりとなりました。

そしてルフィは過去を悔やむことをやめ、二度と大切な人を失わないための力をつけるため、レイリーとの厳しい修行に身を投じることとなります。これは、先に見てきた「ネガティブ感情への対処」としての没頭(修行への集中)、自己効力感を高めるため成功体験の蓄積(修行の中における段階的な成長)<に通じる部分があります。

そして、ルフィはこの経験を糧にして、大きな成長を果たします。そして、この経験を経て改めて仲間の大切を実感することで、挫折の物語に意味を見いだすことができたといえます。

ルフィのレジリエンスの発揮において重要であったのは、気づきを与え、叱咤激励をしてくれるメンターの存在、そして絶望の中でこそ、実は自分は恵まれているということに気づくことができ、その気づきが感謝の念を呼び起こしてくれるということです。

※先に紹介した感謝日記をつけることは、ルフィがジンベエの叱咤激励で呼び起こした気づきを、手軽に実践できるテクニックといえます。



おわりに

いかがでしたでしょうか?

レジリエンスは、現代社会において大きな成果を出す上で必須のメンタルスキルです。

レジリエンスを発揮するには、自分一人で頑張ることも大切ですが、支え、励ましてくれるサポーターの存在が重要です。

皆さんもルフィのように、ジンベェやレイリーのような、サポートを見つけて力に変えましょう!

管理人
のびぃ
大学時代、新世紀エヴァンゲリオン・攻殻機動隊・風の谷のナウシカを身体論的に論じた論文とか書いたり、アニメをテーマにした授業を喜んで履修してました。元来のアニメ好きが高じて、アニメを通して人生に役立つ心理学を学ぶアニメンタリズム運営しています!アニメキャラ考察を楽しみつつ、心理学の智識も学べる一石二鳥系のメディア。
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