ワンピースの主人公ルフィの名セリフを言えば、以下を誰もが思い浮かべるでしょう。
「海賊王に、おれはなる」
ワンピースの第一話から登場したこのセリフは、以降も事あるごとにルフィは口にしています。
しかも、一人でこっそりとつぶやくのではなく、強敵や仲間の前で大々的に公言をしています。
実は、この自分の目標を他人の向けて公表することをパブリック・コミットメントといって、目標の達成率を上げる心理的効果が証明されているのです。
今日は、ルフィを例に、パブリックコミットメントについて解説をしていきます。
目次
海賊王を目指すルフィ
引用:(C)尾田栄一郎/集英社
国民的人気漫画のワンピースの主人公、モンキー・D・ルフィは、小さい頃から海賊王になる夢を持ち、その夢を実現するために、冒険を続けています。
自分よりも遥かに強大な敵にも臆せず立ち向かい、どれだけ劣勢追い込まれている時でも「海賊王になる」という信念を口に出します。
ルフィのこの信念や想いは、連載開始から一度もブレることなく、一貫性を保っています。
このルフィの揺るぎない信念に、多くの仲間が賛同し、ルフィの夢の実現を心から信じてサポートしています。
実は、この一貫性という性質は、人の行動を強くしばり、コミットメントや行動を促す効果があるのです。
人には自分の信念・行為の一貫性を保ちたい欲求がある
ほとんどの人には、自分の言葉、信念、考え方、行為を一貫したものにしたい、あるいは他者からそう見られたいという欲求があることが、心理学者の間で知られているそうです。
この一貫性を保ちたいという欲求は以下の3つの要素からくると言われています。
- 一貫性を保つことで、社会から高く評価される
- 一般的に日常生活に有益である
- 複雑な現代生活をうまくすり抜けるために役立つ、思考の近道が得られる
このような要素が得られるのは、ひとたび決定を下したり、ある立場をとると、自分の内からも外からも、その立場やコミットメントと一貫した行動をとるような圧力が発生します。
一度、自分の立場を明確にすると、行動をその立場と一貫させようとする強い力が自然と生じるのです。
つまり、「海賊王になる」という明確な立場をとることで、ルフィはその立場において行動の選択を行うようになり、周囲もその姿勢を強く評価するのです。
夢や信念がコロコロと変わる人よりも、一貫して同じ夢や目標を持ち行動する人を、人は高く評価するし、自分自身もそうありたいと願うはごく自然な想いといえます。
参考:ロバート・B・チャルディーニ 『影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房,2014)
目標を公表するパブリックコミットメントとは?
引用:(C)尾田栄一郎/集英社
この一貫性の行動圧力を強めるのが、自分の信念や立場を明確にし、周囲に公表するのが「パブリック・コミットメント」という行為です。
他人に見えるような形で、自分の立場を明確にすると、一貫した人間に見られたいという想いから、その立場を維持しようとする欲求が発生します。
一貫していない人は、周囲から、気まぐれ、優柔不断、軟弱などと思われがちですが、一方で一貫性がある人は、合理的で、信頼性があり、健全な人とみなされがちです。
人々が一貫していないと見られるのを避けたがるのは、こういった社会的評価を気にするからです。自分自身のコミットメントで、自分自身の行動に一貫性の圧力をかけるのです。
例えば、禁煙をしたいなら、禁煙することを周囲に公表するとよいでしょう。禁煙を断念した時に、意志の弱い人、ダメな人と思われたくないという想いが、禁煙行動という一貫性の圧力を生じさせるのです。
ルフィ自身が、他人の評価を気にして、パブリック・コミットメントしてるとは考え難いですが、一般の人はルフィの行動を真似ることで、一貫性の圧力が生じて、目標を達成しやすくなるのです。
その他のアニメ・漫画キャラのパブリックコミットメント
ルフィ以外にもパブリック・コミットメントを実践しているキャラがいます。
NATUTO うずまきナルト
引用:『NARUTO』1巻 (C)岸本斉史/集英社
同じジャンプ漫画のNARUTOの主人公「うずまきナルト」も『どの先代も超える火影になる』と公言しています。
日向ネジに落ちこぼれと馬鹿にされても、綱手姫に火影などくだらないと馬鹿にされても、どんな時でも、火影を目指すという立場を一貫して取り続け、その夢を口に出し続けました。
火影になるというコミットメント以外にも、『まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ、それが俺の忍道だ!』というコミットメントも有名です。
自分自身の信念や生き様を宣言することで、この信念に反した行動をとりづらくなります。
ナルトは要所のシーンでこの言葉を用いて、自分自身の立場を明確にしています。
キングダム 李信
引用:『キングダム』55巻 598話 (C)原 泰久/集英社
春秋戦国時代を舞台に中華統一を目指す物語であるキングダム。
平民の身分でありながら、後に秦の始皇帝となる嬴政(えいせい)の友であり、右腕として、戦果を挙げていく主人公の「李信」彼も、自らの目標を常に口に出しています。
それは『天下の大将軍になる』ことです。信もルフィ同様に、どんな強敵相手にも、その立場を変えることなく、臆せずに公言します。
おわりに
ルフィだけではなく、NARUTOやキングダムなどでも、パブリック・コミットが見られました。
みなさんも人気漫画の主人公のように、パブリック・コミットメントを実践して、自らの行動に一貫性をもたせてはいかがでしょうか?