アニメや漫画などの2次元のキャラクターの魅力を高めるには、いかにギャップを作るかが重要であり、国民的な人気を獲得したキャラクターには必ずといっていいほどギャップの要素が含まれています。
このギャップによって印象が大きくポジティブに振れたり、逆にネガティブに振れたりすることを、心理学ではゲインロス効果と呼ばれます。
このゲインロス効果は、当然、現実の人間社会でも起こり得る現象であり、このゲインロス効果を利用することで、自分の印象を相手にポジティブに印象付けることも可能です。
そのため、恋愛心理学のテクニックの中でも、このゲインロス効果がたびたび登場します。
今回は、そのゲインロス効果とは何か、キャラクターの魅力を高める事例から、現実の恋愛において有効活用する方法まで解説していきます!
目次
ゲインロス効果とは?
ゲインロス効果とは、最初に与えられた印象に対して、正反対の印象を後から与えるとその変化の量の大きさから、より強く印象に残る心理効果をいいます。
例えば、ヤンキーが、子犬や老人を助けた姿を見ると、実際以上に良い人に見えてしまうのもゲインロス効果によるものです。この例から、ヤンキー効果と呼ばれることも・・・
最初から、真面目で良い人そうな人が善行を働いても、意外性も、驚きもないので印象に残りません・・・
一方で、不良やヤンキーのように、普段は柄が悪くて、イメージの悪い人が善行を働くと、その意外性から、より強くそのポジティブな一面が印象に残るのです。
本当は、普段から真面目で優しい人がいい筈なのに、この意外性によって人は”勘違い“してしまうのです。
人間の印象なんてものは、主観的で、曖昧なものでしかなく、人は自分の都合の言いように、自分勝手に人の印象を決めつけて、信じ込んでいるのです。
ですが、逆を言えば、人に与える印象は、ギャップを活用すれば、あれ程度コントロールが可能であり、実際以上に自分の印象を良くせみることも可能なのです・・・!
キャラの創作活動や、恋愛においても、この原理を利用しない手はないですよね・・・!
ただ、ゲインロス効果には、ロス効果とゲイン効果の2種類があります。
ロス効果とは?
ロス効果とは、上述であげた、ネガティブな印象からポジティブな印象に振れるのとは逆に、ポジティブな印象からネガティブな印象に振れるパターンを指します。
例えば、真面目で優しそうな印象を持っていた人が、実は、不誠実で暴力的だと判明した場合には、最初の印象が良かっただけに、ネガティブなイメージがより強く印象付けられてしまいます。
ロス効果の例としては、渡辺杏さんと結婚した東出昌大さんの不倫が発覚した際のことをイメージするとわかりやすいです。
東出昌大さんは、家庭的で清純派のイメージで売っていた分、その不倫によるイメージ悪化は著しものとなり、CMも降板となり、芸能活動もままならない事態に陥りました。
不倫のイメージは総じて悪いですが、普段から清純派で売っていたタレントほどそのダメージは大きいです。これがロス効果による、大幅なイメージダウンの影響です。
ゲイン効果とは?
一方で、ゲイン効果とはその逆で、ネガティブなイメージからポジティブなイメージに転換する効果です。
ロスは「失う」を意味しますが、ゲインは「得る」という意味を表します。ポジティブなイメージを獲得すると考えると理解しやすいでしょう。
こんゲイン効果を証明した実験があるので、下記で紹介します。
ゲインロス効果を証明した実験
アメリカの社会心理学者である「エリオット・アロンソン」と「ダーウィン・リンダー」が、女子大生を対象に行った実験です。
簡単に説明すると、下記の4つのパターンのうちどのパターンが最も好感度が高くなるのかを実験しました。
【実験における4つの評価パターン】
① 肯定条件:一連の評価は全て非常に肯定的
② 否定条件:一連の評価は全て非常に否定的
③ 獲得(ゲイン)条件:最初の数回の評価は否定的だが、次第に肯定的になり、①の肯定条件の評価の高さにまで達した
④ 損失(ロス)条件:最初の数回の評価は肯定的だが、次第に否定的になり、②の否定条件の評価の低さにまで達した
①②は、肯定と否定でそれぞれの印象が一定でそのまま、③は最初は否定から入り徐々に肯定的に、④最初は肯定から入り徐々に否定的に、なるように、被験者の女子大生に印象を伝えていきました。
結果は下記の通りになったそうです。
【実験結果】
好感度の高い方から下記の順になった
③ 獲得(ゲイン)条件(最初は評価が悪かったのに良くなっていくパターン)
① 肯定条件(評価がずっと良いパターン)
② 否定条件(評価がずっと悪いパターン)
④ 損失(ロス)条件(最初は評価が良かったのに悪くなっていくパターン)
結果として、③の最初は否定の印象を与えておいたうえで、あとから肯定的な印象を与えた方が、その対象の好感度が高くなったのです。
ずっと肯定的な①よりも、後から徐々に肯定的な印象を与えた方が、肯定の内容は①と同程度でも、より高い好感度を獲得できたのです。
参考:ゲインロス効果とは?
ゲインロス効果のギャップで魅力が倍増した例
以下では、ゲインロス効果によって大きな人気を獲得した有名キャラクターを紹介していきます!
クーデレの元祖!綾波レイ(新世紀エヴァンゲリオン)

国民的人気アニメ新世紀エヴァンゲリオンの顔といっても過言ではない、超人気ヒロイン・綾波レイ。
綾波レイは、初登場時から、必要以上の会話は一切せず、感情表現も一切しない、無機質なロボットのような少女でした。(ネガティブな印象)
それが主人公の碇シンジとの出会いを通して、徐々に人間らしい表情や感情を表現するようになり、主人公のシンジのために料理を覚えようとする健気な姿まで見せるようになりました。(ポジティブな変化)
無機質でロボットのような女の子から、普通の人間らしい少女に変化したことで、綾波レイがより一層かわいい少女に見えてきてしまうのです。
最初が無機質で人間味がなかったからこそ、徐々に芽生えた人間的な感情や、それに伴って現れる、少女らしい表情がより一層尊いものになるのです・・・!
普段はヘタレだがいざという時に超かっこいい!我妻善逸(鬼滅の刃)

国民的人気コンテンツとなった鬼滅の刃。魅力的なキャラの多い鬼滅の刃において、最も人気が高いキャラクターが我妻善逸です。第二回の公式人気キャラクター投票では、第一位を獲得しました。
我妻善逸が、作中における最初の活躍を見せた鼓屋敷編では、鬼殺隊の隊士にもかかわらず、鬼に怯えて、ピーピー泣き喚めき、自分が助けるべき子供にまで泣きつくほどのヘタレっぷりを見せつけていました。(ネガティブな印象)
初めて善逸を見た人たちは、「なんだこのヘタレの泣き虫は?大丈夫か?」と大半の人が思ったでしょう・・・
しかし、恐怖のあまりに失神した善逸は、雰囲気が一変。即座に神速の居合切りで、鬼の首を一刀両断するという、超強い剣士の姿を見せました。(ポジティブな変化)
この善逸の変貌ぶりに多くの視聴者は度肝を抜かれたことでしょう。
このように善逸は普段はヘタレだが、いざという時には、頼りになるというギャップで、多くのファンを魅了したのです。
やっぱり弱そうなやつが実は強いという方が、より強く印象に残るのです。
ドラゴンボールのフリーザの最終形態が、一番小さくシンプルな姿であるのも、よりその強さを印象づける上で効果的なのでしょう。
ゲインロス効果を現実の恋愛で有効活用するには?
以下からは、現実の世界でゲインロス効果を有効活用する上でのポイントを解説していきます。
最初に印象には注意が必要
最初に否定的な印象を与えて、後から肯定的な印象を与えるのがゲインロス効果ですが、一方で、初対面の印象は覆りにくいという研究もあるので注意が必要です。
人は、対象に対して抱いた最初の印象を元に、その対象を評価する傾向があり、その評価は簡単には覆らないということがわかっており、これを「初頭効果」といいます。
1946年に、アメリカ心理学者、ソロモン・アッシュ(Solomon Eliot Asch)が最初に提唱した概念です。
アニメや漫画など2次元の世界では、そのキャラクターに関する、過去や深層心理、本性など、多くの情報が視聴者に与えられます。また、より劇的な演出によって、ポジティブな印象を演出するので、ネガィテブな印象も十分に覆せるのです。
ただし、非常に限定された情報しかない、現実の人間関係においては、最初に与えた印象を覆すのは非常に難しくなるのです。
そのため、アニメキャラを真似して、初対面の人に悪いイメージを植え付けようとするのは得策ではないでしょう。(ツンデレキャラのように、ツンケンしてみせたりなど・・・)
初対面に関しては、できる限り良い印象を与えることを心がけた方が無難です。
別のところで、意外性のある一面を発揮するようにするとよいでしょう。
自分の現状を把握してギャップの可能性を探る
ギャップは無理に作ろうとしてもうまく行かないので、現実の自分を把握した上で、うまくギャップを作れないか探ってみましょう。
例えば、見た目がギャルっぽい印象を抱かれやすい女性は、料理や裁縫など家庭的なスキルを身につけたり、茶道や華道など意外性のある趣味を持つと、より家庭的で女性らしい印象を与えることができるでしょう。
男性の場合でも、一見、チャラそうで不真面目に見えても、実は勉強ができたり、優しかったりすると、より一層ポジティブな印象を与えることが可能です。
一方で、見た目が地味な男性でも、スポーツやアウトドアなど、アクティブな趣味を作ることで、その意外性からより男性らしいポジティブな印象を与えられる可能性があります。
自分の現状を活かす形で、うまくギャップを作るようにするとよいでしょう・・・!