鬼滅の刃で登場する鬼の中でも、他人に対する憎悪や妬みの感情を強く持っている上弦の陸・妓夫太郎 (ぎゅうたろう)。
今回は、そんな妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の歪んだ性格がなぜ形成されたのか、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の過去や性格を心理学の知見を交えつつ考察していきたいと思います!
目次
上弦の陸・妓夫太郎 (ぎゅうたろう)とは?
引用:©吾峠呼世晴/集英社
鬼舞辻無惨配下の鬼の中でも特に強い鬼である十二鬼月の中で、6番目の強さを誇りる上弦の陸です。
上弦の陸は、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)と、その妹である堕姫(だき)の二人で上弦の陸という扱いになっています。
妹の堕姫(だき)が美人系の鬼であるのに対して、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は異常なまでにやせ細った体に、不気味なシミのある不細工な顔立という、非常に醜悪な容貌をしています。
引用:©吾峠呼世晴/集英社
この顔のシミは先天性梅毒によるものと言われています。妓夫太郎 (ぎゅうたろう)が生まれたのは遊郭であるということからも両親が梅毒に感染して、それが子供の妓夫太郎 (ぎゅうたろう)に移ったと推察されます。
鬼としての実力は作中でも屈指。妹の堕姫(だき)は、歴代の柱を7人、兄の妓夫太郎 (ぎゅうたろうに至っては15人もの柱を葬っています。
遊郭編にて、音柱・宇随天元、炭治郎、我妻善逸、伊之助らと戦闘し、その強さで宇随天元を柱引退に追い込むほどの実力を見せつけました。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の能力・鬼血術
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は自らの血を鎌に変え、その血鎌による斬撃で敵を切り裂くのが基本的な戦闘スタイルです。
おまけに血鎌には猛毒がついており、かすり傷を負っただけで致命傷にあたるという厄介さです。忍びとして毒に対して耐性を持つ宇随天元ですが、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の毒の強さに即死は免れるものの、徐々に弱っていきました。
飛び血鎌(とびちがま)は、飛ぶ斬撃で、しかも妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の意のままに操ることができる追尾する斬撃で非常に厄介です。
引用:©吾峠呼世晴/集英社
跋扈跳梁(ばっこちょうりょう)は、全方位的に血の斬撃を飛ばしつつ、敵の攻撃を防ぐことできる攻防一体の技です。
引用:©吾峠呼世晴/集英社
円斬旋回・飛び血鎌(えんざんせんかい・とびちがま)は、予備動作なども一切なしで、らせん状の血鎌を放つ技です。その威力は妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の技の中でもトップクラスであり、この攻撃で周囲一帯を更地にできるほどです。
引用:©吾峠呼世晴/集英社
しかも、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の厄介な点は、単体で倒すのではなく、妹の堕姫(だき)と同時に頸を落とさなければ死なないという点です。
堕姫(だき)ですら柱を7人葬っており、そんな鬼を二人同時に倒さなければならないというのは絶望感が半端ないです・・・
炭治郎たちは、複数人いたために対応できましたが、単独で戦闘した場合には、倒すのが非常に困難といえます・・・!
上弦の陸・妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の悲惨すぎる過去
親に何度も殺されるかける
引用:©吾峠呼世晴/集英社
鬼滅の刃には凄惨な過去をもつキャラクターが多く登場しますが、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)はトップクラスに凄惨な過去を持っています。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は遊郭の中で最も劣悪な環境の中で生まれ、親からは食い扶持を減らすために何度も殺されるかけるという悲惨さです。
また、極度の貧困のために、道端のネズミや虫を食べるて生活するという限界ギリギリの状態で生き、さらにその醜い容姿から周囲の人間から蔑まれていました。
名前の由来は遊郭の客引き・集金の役職名
引用:©吾峠呼世晴/集英社
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の妓夫(ぎゅう)の字は、遊郭にて客引きや集金・取り立てをしていた者たちの役職名が由来しています。
親から名前を与えられなかった妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は、この取り立ての仕事をして、はじめてその役職名が自分の名前となるような状態でした。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の取り立て率は120%と驚異的な数字を誇りました。人間時代から戦闘能力は高く、またその醜い容貌から周囲の人間も妓夫太郎 (ぎゅうたろう)を気味悪がっていたこともあり、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の取り立て率は120%と驚異的な数字を誇りました。
取り立ての仕事は、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)にとって天職だったのです。
妓夫(ぎゅう)という天職を見つけて、人生が軌道に乗り始めた矢先に悲劇が起こります。
人生の救いだった妹の梅が殺される
引用:©吾峠呼世晴/集英社
妹の堕姫(だき)の人間時代の名前は梅(うめ)といい、母親の病名から付けられたというこれまた悲惨な由来です。
醜い容貌をした妓夫太郎 (ぎゅうたろう)に対して、妹の梅は、幼い頃からその美貌で周囲の人間を圧倒するほどで、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)にとっては自慢の妹であり、人生の救いのような存在でした。
遊女として働いてた梅が、癇癪を起してお客の侍の眼を突いて失明させてしまいました。
「奪われる前に取り立てろ」という攻撃的な価値観をもつ妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の下で育ったために、梅も攻撃的な性格をしていました。
そして、その失明させた侍が激怒し、梅を縛り上げたのちに火をつけて焼き殺すという、この上ないほど凄惨なやり方で報復をされてしまいます。
全身が黒焦げになり虫の息になっていた梅を抱えて先叫ぶ妓夫太郎 (ぎゅうたろう)。
『わあああああやめろやめろやめろ!!俺から取り立てるな』
『何も与えなかったくせに取り立てやがるのか許さねえ!!許さねえ!!』
引用:©吾峠呼世晴/集英社
その背後から、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)を殺そうと迫る侍と女将に気づいた妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は、持っていた鎌で侍と女将を惨殺しました。
その後、瀕死になった妹の梅を抱えて、街を彷徨っていると、当時上弦の陸であった童磨(どうま)と出会い、鬼となったのです。
引用:©吾峠呼世晴/集英社
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の歪み切った性格を心理学で解説
幸せそうな人間に対する強い憎悪と嫉妬心
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の性格で最も特徴的なのが、幸せそうな人に対する強い嫉妬心です。
それが顕著に現れるのは、音柱・宇随天元と対峙した際です。
醜い容貌で周囲から蔑まれてきた妓夫太郎 (ぎゅうたろう)と、恵まれた体格に美形の容貌でおまけに美人の嫁が3人という音柱・宇随天元。まさに、正反対といっても過言ではない二人。
そんな宇随天元に対して、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は強い嫉妬心を抱くと同時に、憎悪の感情を向けてきます。
『妬ましいなぁあ、お前本当にいい男じゃねぇかよなあぁ』
『お前女房が3人もいるのかよ、ふざけるなよなぁ!!なぁぁぁぁ!!許せねぇなぁぁ!!』
引用:©吾峠呼世晴/集英社
『妬ましいなああ、妬ましいなああ、死んでくれねぇかなあ』『そりゃあもう、苦しい死に方でなぁあ、生きたまま生皮剥がれたり、腹を掻っ捌れたり、それからなぁ』
引用:©吾峠呼世晴/集英社
嫉妬心は誰でも抱く感情でありますが、その感情が憎悪に転換するかどうかには個人差があります。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は、ただ妬むだけではなく、憎しみの感情を抱き、攻撃の対象とみなしてきます。
おそらく相手が敵対する鬼殺の隊士でなくとも、自分が持ち得なかった美貌や幸せを持っている人間全てが憎いのです。
この感情の根底には、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の強いコンプレックスが要因となっていると考えられますが、その点については後述します。
妹への偏愛の裏にあるもの
引用:©吾峠呼世晴/集英社
地獄のような日々を送っていた妓夫太郎 (ぎゅうたろう)にとって救いとなったのは、妹の梅の存在でした。
容貌が醜く周囲から蔑まれてきた妓夫太郎 (ぎゅうたろう)にとって、周囲を圧倒するほどの美貌をもつ妹の存在は、幾分か自分自身の劣等感を和らげてくれる存在だったのでしょう。
だからこそ妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は妹の梅を傷つけるような奴は決して許さなかったのです。
その妹の梅に対する愛は、自分自身の強いコンプレックスが起因していると考えられます。
元々妹想いの性格だったのかもしれませんが、自分のコンプレックスを補ってくるような存在だからこそ、より一層、妹の梅という存在が妓夫太郎 (ぎゅうたろう)にとっては大事だったのです。
それは、梅が鬼の堕姫(だき)になった後、顔に傷がついた時に『せっかく可愛い顔に生まれたんだから、顔は大事にしろ』という発言をしていることからも、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)が妹の美貌に強い価値を感じていたことがわかります。
引用:©吾峠呼世晴/集英社
根底にあるのは劣等コンプレックス
引用:©吾峠呼世晴/集英社
美形でイケメン・恵まれた体格をもつ宇随天元に対して、強い妬みと憎悪を抱いている点も、美人として生まれた妹を自慢に思ったのも、すべては、自分の容貌に対する劣等コンプレックスが起因していると考えられます。
心理学においてコンプレックスとは、無意識下での感情を伴う心的複合体のことを指します。
劣等コンプレックスのもとになるのは様々で『生い立ち』『容姿』『家庭の経済状況』『健康問題』『偏見によるいわれなき誹謗中傷』など
正直、妓夫太郎 (ぎゅうたろう)はこの全てに当て嵌まり、劣等コンプレックスの塊といえます。ただ、その中でも強く劣等コンプレックスを抱いていたのは『醜い容姿』でしょう。
人は、無意識下のコンプレックスを克服しようとして、無意識のうちにも奮闘努力をしています。これを心理学では「防衛機制」における「抑圧」と呼びます。
その「抑圧」が歪んだ形で現れるのが犯罪ともいえるのです。
普段は自覚できていないコンプレックスは、意識しないようにしたり(抑圧)、むしろコンプレックスを補う長所を伸ばそうとする(置換)などといった「防衛機制」で対処しようとしますが、その対処が、周囲に対する攻撃やや憎悪といった歪んだ形で表出してしまうのです。
強い劣等コンプレックスには犯罪を引き起こす危険性があるのです。
周囲の人々や社会から粗末に扱われてきた、馬鹿にされてきたという被害者意識や迫害への恐怖心が極度な反撃となって現れるのです。
まさに醜く不気味な容姿ゆえに、虐げられてきた妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の生い立ちは、この点に合致します。
参考:『面白いほどよくわかる! 犯罪心理学』目白大学教授 内山絢子監修
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は、まさに生まれ持った醜い容貌という劣等コンプレックスが、生来の残忍で暴力的な性格と混ざり合い攻撃的な反応として表出しているのです。
無意識下で蓄積していたコンプレックスが極端な憎しみ、反撃となって現れているのです。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)性格が歪んだ原因は育った環境にある?
引用:©吾峠呼世晴/集英社
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)がこのような歪んだ性格になってしまったのは、生まれついた醜い容貌に対する劣等感が多きいですが、容姿が醜い人全員が歪んだ性格になるとは限りません。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の性格形成を歪めのたのはその生育環境も大きく影響していたと考えられます。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)は親から名前も与えられず、生まれた時から、何度も親に殺されかけているなど、苛烈な虐待を受けていました。
幼少期の虐待は、子供の人格形成に大きな影響を与えることが指摘されています。
ハーバード大学医学部精神科学教室客員助教授の友田 明美氏によると、「おまえなんか生まれてこなければよかった」などといった言葉による虐待(暴言虐待)でも子供の脳にダメージを及ぼすそうです。
また、小児期に過度の体罰を受けると,暴力などの非行を繰り返す素行障害や気分障害といったさまざまな精神症状を引き起こすことが知られているそうです。
また、シリアルキラーの心理分析を担当した、元FBI捜査官のロバート・K・レスラーの著書『FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』では、シリアルキラーの中に幼少期に虐待を受けていたものが多く存在していたと述べている箇所があります。
実際に、アメリカの犯罪氏の残るシリアルキラーで、33人もの青少年を殺害したジョン・ウェイン・ゲイシーは父親から苛烈な虐待を受けていた過去がありました。
このように、犯罪心理学の研究において、幼少期の虐待と、非行や殺人などの犯罪行為との関連性が指摘されています。
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)も、たとえ醜い容姿に生まれていたとしても、愛してくれる両親のもとで育っていたならば、もっと違った人生を歩んでいたのかもしれません・・・
まとめ
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)の性格が歪んだん原因は、自分の要望に対する強い劣等コンプレックスがあり、さらにひどい虐待を受けたことで、人格形成に大きな問題が発生し、劣等コンプレックスが周囲への憎悪という攻撃的な反応として表に出るようになったのです。
妹の容貌に対するこだわりも、この強いコンプレックスの現れといえます。
引用:©吾峠呼世晴/集英社
妓夫太郎 (ぎゅうたろう)と堕姫(だき)の兄妹は、最後の最後で悲しい兄妹愛を見せてくれるなど、徹頭徹尾クズな鬼が多い上弦の中でも哀れみの感情を抱かずにはいられない鬼でした。